全力でトレーニングを楽しんだ『ジュラシック・ワールド』女優

『ジュラシック・ワールド』に向けてブライス・ダラス・ハワードのトレーニングをしたときのこと。ブライスの最大の目標は安定性とバランス感覚を向上させることだった。トレーニングを始めた当初、彼女には地面に片足で立つのがとても難しかった。

だが、『ジュラシック・ワールド』のためのトレーニング後、彼女は目をつぶっていても、バランストレーナーの上に支えなしで片足で立つことが楽々できるようになった。ブライスは興奮を隠せなかった。これこそ大きな成長の証だ。

トレーニングの最初でも最後でも、ブライスはいつでも笑顔で、笑いを絶やさなかった。いくつかのトレーニングがとても楽しいといつも私に伝えてくれた。その前向きな姿勢のおかげで、彼女はトレーニングから最大限の効果を引き出せたのだろう。

撮影現場で体調を維持できないと演技に悪影響が出る

ブライスはハイヒールを履き、白いスーツを着て、何カ月も恐竜に追いかけられて走っているようだった。シナリオに入りこむには、まずコンディションを整え、準備しなくてはならない。

サイモン・ウォーターソン『インテリジェント トレーニング』(かんき出版)

『ジュラシック・ワールド』のようなアクション映画の撮影では、1日かけても1分くらいしか使える尺がないという。俳優は1日12〜14時間も撮影に臨み、ジャングルのなかを走り抜けたり、トラックに飛び乗ったり飛び降りたり、車の下に飛びこんだり、Tレックスを撃退してまわったりする。それだけやっても、日によっては、撮れ高が60秒もないこともある。

『ジュラシック・ワールド』の制作準備段階と撮影期間中、ブライスはかなりの運動能力を求められた。恐ろしく長く、過酷な撮影が半年近く続き、彼女は来る日も来る日も午前6時から午後6時までは撮影現場にいたようだ。

こうしたスケジュールでは、体調管理の方法を知っておかなくてはならない。そうしないと、とてもやり通せない。私の主な目標は、俳優たちが負うかもしれない痛みやケガを最小限に抑え、体調不良にならないようにすることだ。スケジュールには体調を崩しているような余裕はない。

映画の撮影中は健康であるほど、撮影が楽しくなる。こうした大作の撮影時に一番避けたいことは毎日毎日、疲労困憊こんぱいすることだ。というのも、自分にはできると感じなくなると、途端に自信がなくなってくるからだ。自信がない状態で現場に現れると、それがスクリーンにも映りかねない。