「いつ噴火に遭遇してもおかしくない」と認識して登る

そして最も重要なのは、火山に登る以上、いつ噴火に遭遇してもおかしくないという認識を持つことだ。無警戒だった火山が突然噴火することは充分起こりうることであり、事前にいくら情報を収集したとしても、噴火に遭遇することを防ぎ切れるものではない。

以前、噴火警戒レベルが1で火口から500メートル以内への立ち入りが禁止されている浅間山に登ったとき、警告板を無視してロープを越え、火口付近へと立ち入っていく登山者が少なからずいた。噴火後の御嶽山では、立ち入りが規制されている警戒区域内に入り込む登山者があとを絶たず問題になった。噴火警戒レベルが2の霧島連山・新燃岳では、入山規制中のエリアに立ち入った登山者の遭難騒ぎが起きたこともあった。

まさか、この瞬間に噴火するはずはない……、それがごくふつうの認識であり、「噴火するかもしれない」と思っていたら、まずその山には登らないだろう。数十年~数百年という噴火の周期のなかでは、前回の噴火でどれほど多くの犠牲者が出ようと、悲しいかな人はその記憶をいつか忘れてしまう。御嶽山の噴火の記憶にしても、あと10年、あるいは20年したら、すっかり忘れ去られているかもしれない。

写真=iStock.com/backpacker
※写真はイメージです

まずはシェルターや大きな岩陰を目指して避難

だが、繰り返していうが、火山に登るからには、噴火に遭遇するリスクは常についてまわる。それを前提としたうえでの「登る」「登らない」の判断は、個々の登山者の責任によるものである。

もし不幸にも登山中に火山噴火に遭遇してしまったら、浅間山や御嶽山などのようにシェルターがある場合は、そこに避難するのがいちばんだ。シェルターがなければ、大きな岩陰などに身を隠すか、山小屋などに避難する。

ただし、先の御嶽山の噴火の際には、直径数センチ~5、60センチメートルの噴石が時速350キロ~400キロメートルで飛び出したと推測され、火口周辺ではそれが雨のように降り注いだという。しかも、なかには軽トラック大の噴石まであったというから、そんな状況下ではどこかに身を隠せたとしても、気休めにしかならないかもしれない。