「女の牛丼屋」だったスープストック
スープストックは、「女の牛丼屋」と呼ばれてきた。実際創業者の遠山正道氏が、「夜の8時くらいまで残業して、帰り際に駅のスープストックに立ち寄って夜ご飯。……ランチならまだしも、夜に女性がひとりで牛丼屋とか、無理じゃないですか(笑)。そこに、駅にスープストックがあると」(Soup Stock Tokyoが「エキナカ」で成功した理由 スマイルズ 遠山正道社長インタビュー #1)と述べているように、もともとそうした位置づけを狙っていたようである。
実際に顧客は「0歳から100歳までと言っているけど、実際にスープストックのお客さんは8割ぐらいが女性」だという。別の記事によると、「都心で働くバリバリのキャリアウーマン」の「秋野つゆ」さんというモデルを設定して、店舗のありようを考えたという。
私も個人的にスープストックを使うときは、駅の乗り換え時か、子どもの塾の帰りを待つなどのすきま時間、疲れ果ててファミレスにすら行く気力のないときであり、何よりも理由は駅に近い、駅中にあるという立地による。さらに料理が健康的で、なによりも一人客が多く静かですいており、疲れないというのが付加的な魅力だった。少なくとも、友達と誘い合わせていくような使い方はしたことがない。徹底的に女性の一人客が目立つ静かなお店、というイメージがある。
スープストックが出したメッセージ
スープストックが最初に出した、離乳食の提供開始のメッセージを見てみよう。
これはきつい。炎上の一番の原因は、ここではないかと思っている。
これまでバリキャリで働いていた秋野つゆさんたちは、結婚して「ライフステージ」を変えていた、というのである。こういわれてしまえば、「ライフステージ」を変えていない独身女性は、「取り残された」ように感じてしまう。
私自身、結婚が遅かったからよくわかるが、自ら望んで独身を続けてきていたとしても、こう言われれば、自分だけがバスに乗り遅れたかのような感覚を持たされてしまうものである。しかも、これまで味方だと思っていたスープストックに、「他のひとは、新たなステージに進んでいるんですよ」と、後ろから刺されたような気持ちになろう。