福井はなんでそんなに元気なのか?

福井のような地方県でピッチイベントを単独開催する場合、登壇するベンチャー経営者を確保し続けることがなにより難しい。雨後のたけのこのように若いスタートアップが次々と誕生する都会とは違い、あっという間に「弾切れ状態」に陥るからだ。

そんな難易度の高いピッチイベント運営を、ズブの素人が手作りで始めようというのだから、相当に無謀な挑戦であったのは間違いない。試行錯誤を重ねながら7年が経ち、登壇者集めなど依然として厳しい状況は続いているが、「福井ベンチャーピッチ」は今年で9回目を迎える。

写真=ふくい産業支援センター提供
第3回「福井ベンチャーピッチ」の様子。2018年9月18日、福井市内。

他の地方県からみると、ふんばって開催し続けている福井県の姿が、少し奇妙に映るのかもしれない。数年前から「福井はなんでそんなに元気なのか?」という問い合わせを全国各地からいただくようになった。

3つの「イレギュラー」

当然ながら、福井でピッチイベントを開催し続けられているのは、「福井が元気だから」ではない。なにが正解かもわからないまま、とにかく足元を掘り続け、必死にもがいてきたというのが正直なところだ。しかしそうやって、手掛かりの無い中あれこれ試みながら進めてきた無我夢中の行動が、ピッチイベントの持続的実施につながったように思う。

福井の事例が他地域の参考になるかわからないが、今となっては結果オーライだったと感じている福井の取り組みは、以下の3つだ。

① コンサルタントに外注しなかった

2017年当時の福井県は、私を含めて知識が無さ過ぎたがゆえに、ベンチャー支援を行うことがセミナーを1つ開催する程度のライトなものだと勘違いしていた。そのため、別事業を担当するセンター職員が兼務でピッチイベントの立ち上げを担うことになったのだが、今ふり返ると、地元の人間が関わらざるを得ない状況を最初の段階でつくれたことが、地域に根差した支援体制の構築につながった。

福井のような小さな地域がベンチャー支援を継続するためのキーファクターは、華やかなイベントでも、洗練された支援スキームでもなく、主体性を持って自ら考え実行する、地域のベンチャーエコシステムのハブとなる人材だ。「地域に根差し、5~10年の中長期的スパンで伴走し続けてくれる存在ほど心強いものはない」と県内のベンチャー経営者は口々に話す。

いくら他地域の成功事例を持ち込んだところで、そこに当事者意識を持って実行し続ける地元の人間がいなければ、本質的な地域活性にはつながらない。逆に言えば、不慣れでもいいから、自ら考え行動する人の周りには、協力者が自然と集まってくるものだ。