「いつもとおなじ」を少しずつ崩す

「いつもとちがうこと」を受け入れるためには「いつもとおなじこと」を崩していく練習が必要です。ストレスなくこなせるルーティンのスケジュールがある場合、そこに「いつもとちがうこと」を差し込んでいきます。

ちなみに、この練習をするためにも、スケジュール表などで見通しがもてていることは大事です。

図版=平熱『特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方』より、イラスト=©まる

1から10までを順番にこなしていく途中、たとえば5と6の間に「いつもとちがう」活動を入れます。このとき注意しなくちゃいけないのは「嫌な活動」をいきなり入れないことです。(歯みがきのあとに「スクワット50回」なんてスケジュール地獄じゃない?)

だから、はじめは「うれしい活動」で「いつもとちがう」を体験しましょう。朝ごはんのあと「チョコをひとつ食べられる」みたいな。ちなみに「ごほうび」が強すぎると、これを外すのに苦労するので、控えめな「ごほうび」がおすすめです。

このような練習をいろんなパターンで繰り返します。3と4の間に入れたり、「うれしい活動」を「ちょっとうれしい活動」に替えたりします。そして少しずつ「ちょっと苦手な活動」や「めんどうな活動」を入れていったり、活動を「中止」していったりしましょう。

その際、子どもが見ていない間にスケジュールを勝手にいじるのはおすすめしません。子どもが見ているときに、子どもにわかる形で変更していきましょう。

勝手に見えないところでスケジュールを変えちゃうと、それだけで不安になったりパニックになったりする子もいるでしょうし、なにより子どもが「スケジュールを変更している(見通しや予定が崩れていく)様子」を見て、受け入れていく練習をしたほうがいいです。

こうやって、「いつもとちがうこと(見通しや予定が崩れること)」を受け入れたり、対応したりする練習をしていきましょう。

「ちょっと休憩したい」と言えるように練習

つぎに「不安でいっぱいになった場合」の対応です。これは「不安でいっぱいになった場合」の適切な対応を知り、実践していくことです。

「不安でいっぱいにならない方法」にアプローチするわけではありません(ちなみに、不安は「見通し」や「経験」でやわらげていくことができます)。

「不安でいっぱいになる」ことは仕方ありません。だれだって、不安になるときはなります。ポイントは「不安でいっぱいになった場合」に取るべき「適切な行動」をまず「知っていること」で、そのあとに、「適切な行動」を「実践していく」という順番です。

いつもと予定がちがう、慣れていないところに外出するなど、ある程度「不安でいっぱいになる」ことが予想できている場合、事前にそのときの「適切な行動」を伝えておくといいです。

そして「適切な行動」ができたら、なにかしらの「うれしいこと」があると「見通し」をもたせてあげるのもいいですね。

たとえば、不安でいっぱいになって、「帰る!」と大騒ぎして身動きがとれなくなってしまうのは困るけど、「ちょっと休憩したい」と声をかけて10分休んで戻ってくるならオッケーじゃないですか?

そして、パニックにならず戻ってきたら「よく10分で落ち着いて戻ってこられたね!」とグミをひとつあげ、「不安でいっぱいになった」ことは5メートル横において、戻ってきたことをただひたすら祝いましょう。

子どもから不穏な空気が流れたら「こんなとき、どうすればいいんだっけ?」など、早めにアシストしてあげることも大事です。

このようなサポートやコミュニケーションを重ね、子どもたちが「不安でいっぱいになったときは、こうやって乗り切ればいいんだな」と「見通し」をもっていってくれたらいいですね。