「大人の発達障害」にはどのような特徴があるのか。精神科医の岩瀬利郎さんは「発達障害の人は周囲が『エッ』と驚くような言動を取ることがある。それは相手との関係性や反応を読むのが苦手なことが多いからだ。そのことがあらかじめ分かっていれば、本人や周囲が対策を講じることはできる」という――。

※本稿は、岩瀬利郎『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)に一部を再編集したものです。

仕事に悩む日本人女性
写真=iStock.com/key05
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悪気はないのになぜか人を怒らせてしまう

自分なりの強固な世界観を持っていて、相手の気持ちを想像することが苦手だったり、相手の言葉を字義通り受け止めがちだったりするASDの人。多動傾向があるため、人の話を黙って聞いていられなかったり、注意力散漫で約束をすっぽかしたりすることがあるADHDの人。

発達障害の人は相手との関係性や反応を読むのが苦手なことが多く、周囲の人が「エッ」と驚くようなその場にそぐわないことを口にしてしまうこともあります。

周囲の人を困惑させるそんな言動をしてしまう発達障害の人たちは、常にトラブルの火種を抱えて生きているようなもので、それは本人にとってもつらいことであるのは間違いありません。

特に、日本が育んできた和を重んじる文化では、いわゆる“あうんの呼吸”で、みなまで言わずともお互いに理解し合えることを美徳とする側面がありますが、ASDの人もADHDの人も、「空気を読む」ことが非常に苦手、あるいはまったくできなかったりすることがあります。

私は30年以上、入院・外来を問わず、これまで1万人以上の発達障害の方やその他の精神疾患の方、それらの特性に戸惑って悩んでいる人たちと接してきました。その経験からいくつかの事例を紹介します。発達障害の人たちの言動の「なんで?」が理解できれば、イライラせずに受け止めることができるはずです。

皮肉を言われても気づかない

先輩は「ありがとう」と言っていた。「色々と勉強になった」とも言っていたし、経験を積むため、私の仕事に前から興味を持っていたのかも? どっちにしても喜んでいたから、手伝ってもらって良かったと思ってたんだけど……。嫌なら嫌って言ってくれればいいのに。(26歳・女性K)

発達障害の人は、相手の言葉を字義通りに受け取ってしまう傾向があります。締め切りに間に合いそうもなかった仕事を、先輩に手伝ってもらったASDのKさん(26歳・女性)。

やっと終わったとき、「今回は私も色々と勉強になったわ。仕事が遅い同僚のおかげね。ありがとう」と言われたそうです。