優先順位がつけられず、約束を守れない

書類の提出日だったのに作っていなくて、上司に「何をやっているんだ!」と叱られた。スケジュール帳に書いてはいたんだけど、そんなに大事なことだと思っていなくて。面倒な書類なので後回しにしていたけど、そのうちやろうとは思っていたんだよね……。(30歳・女性T)

発達障害の人は、大人も子どもも“約束を守れない”という症状が非常によく見られます。重要な約束もしばしばすっぽかします。理由は明確にはなっていませんが、物事の優先順位をつけることが苦手という特性と関係しているのかもしれません。

定型発達の人であれば「まずはこれが最優先で、次にこれを」と当たり前にできる判断が難しく、つい簡単な案件から手をつけているうちに、重要課題が抜け落ちてしまうことがあるのです。

ADHDの会社員Tさん(30歳・女性)は、大事な資料作りや得意先への訪問、会議などの約束を忘れてしまうことが重なり、ついに上司から注意を受けたそうです。

また発達障害の人の中には、約束は覚えているけれど故意に守らないということもあります。

これは、約束ごとより、自分の気持ちを優先してしまう結果。約束の重要度がわからないため、自分の中の“行きたくない・やりたくない”という気持ちが、“約束を守らなければ”という気持ちを上回ってしまうのです。

若いアジアのビジネスマンは、オフィスでの会議中に見上げ、考えます。
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自分の気持ちを優先してしまう

すっぽかし厳禁の重要な約束や予定は、すべてスマートフォンに登録してもらいましょう。充実した機能を使いこなすことで、トラブルを減らすことができたという患者さんがたくさんいます。超重要な予定は色を変えるとか、前日にリマインドするなどの仕組みをつくるのです。

イラスト=『発達障害の人が見ている世界』より
イラスト=『発達障害の人が見ている世界』より

特に大事な約束は、本人がスマートフォンに入力するのを確認するとともに、「これは特に重要な約束だから」と、メモを手渡しておくのも有効。本人だけではなかなか自覚できない約束の重要性が伝わるでしょう。