感情を抑えられない子への対処法

お悩み:『怒ったときに、感情を抑えられずにものを投げたり、目の前の人にひどいことを言ってしまったりします。』

いいですか、問題は「怒ること」ではなく「怒りを爆発させること」です。ものを投げて壊してしまったり、まわりの人を叩いたり、汚い言葉で罵ったりしてしまうことが問題です。

特別支援学校では、(怒りの)感情を爆発させないために「負ける練習」をします。思うようにいかないことへの対応です。

「負ける練習」のポイントは、「運や偶然性」により「すぐに」決着がつくゲームを「何度も」行うことです。どちらか片方に勝敗を偏らせず、「すぐに」「何度も」ゲームを行うことで、負けたことによる「怒りの感情」を引きずらず、切り替える感覚を養います。

具体的には、引いたトランプの数字で勝負したり、くじびきで勝敗を決めたりするようなゲームですね。たくさん勝って、たくさん負けます。

トランプをする少年たち
写真=iStock.com/real444
※写真はイメージです

そして、ゲームの「まえ」に「負けたあとの正しい行い」もしくは「負けたあとのよくない行い」を説明したりイラストで提示したりしておきます。

さらに負けの耐性を高めていく練習として、おなじように「すぐに」決着がつくゲームを「3連勝したら勝ち」「先に10勝したら勝ち」など、「勝利の条件」を遠くにしていきます。

ストレス耐性をスモールステップで伸ばしていくイメージですね。

怒りをクールダウンする方法

また、高等部の生徒など、卒業後の社会生活に向けたコミュニケーションスキルを高める段階では、「カッとなって暴力を振るったらどんな罰を受けるか」について説明します。

手を出す以外にも、暴言や誹謗ひぼう中傷も罪になることを教え、これまで積み上げてきたその子の努力や時間が一瞬にして崩れる危険性を何度も伝えます。

「怒りを爆発させないため」にいちばん大事にしてほしいことは「怒りの対象と物理的に距離を取る」ことです。つぎに、深呼吸をする、6秒数えるなど「時間を空ける」ことです。

平熱『特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方』(かんき出版)
平熱『特別支援教育が教えてくれた 発達が気になる子の育て方』(かんき出版)

「ムカつく!」と感じたら、対象の人と距離を詰めるのではなく距離を空ける。手にものをつかむのではなく、手からものを放す。「物理的に」攻撃できない距離を確保して、人とものと時間から間を空け、クールダウンします。

そして、そのあと冷静に話し合えたらグッドです。

こちらに非がないのに相手が「怒りを爆発」させてくることもあるでしょう。我慢するのはほんとにしんどいですが、それでもグッとこらえないといけません。

むずかしいけれど、その場だけは水に流し、(場合によっては証拠を集め)まわりの人に相談できる「大人」になってもらえるよう、導いてあげたいですね。

【関連記事】
【第1回】行儀の悪さには「見えない原因」がある…黙って座っていられない子を叱らず変えるプロ教員の奥義
夜遅くまでゲームをする子供に「いい加減にしなさい」は三流、「やめなさい」は二流、では一流の注意とは?
「お母さん、宿題終わったよ」にどう返すか…がんばった子どもに言ってはいけない"最悪なひとこと"
空気が読めない、皮肉に気づかない、約束が守れない…「大人の発達障害」の典型例と対策を精神科医が解説する
子どもに月経や射精について話すときに「絶対使ってはいけない言葉」2つ