「自分はバカだ」と思えると学びと発見がある

精神科医の和田秀樹さんの著書『先生! 親がボケたみたいなんですけど……』(祥伝社)によれば、認知症を発症させない、あるいは進行させないために大切なことは「脳を悩ませること」だそうです。

その意味から考えると、新しい水を受け入れて自分の脳を「泉」のようにしておくことが大切なのではないかと感じます。

「新しい水=わからないこと」を受け入れなければ、水はすぐに澱んでしまいます。澱んだ水の場所には新しい生き物が誕生したり新しい植物が芽を出したりすることはありません。

なにか新しいものに遭遇したら、まず「おや?」と疑問を抱いてみる。ちょっと眺めたり、触ったりして「面白そう」と好奇心を喚起させる。いろいろと情報をインプットして「わからない」を経て「なるほど」と理解する。そして「わかった」と自分のスキルとして身につけたり、誰かに話したりしてアウトプットする。

こういう姿勢こそが、人生の後半期を「老春」にするために必要なのです。新しい情報に対して好奇心を喚起させ、インプット、アウトプットを繰り返すことは「脳を悩ませること」そのものにほかなりません。認知症を遠ざけることにもつながります。

「自分が利口だと思っているからダメなんだよ。自分がバカだと思っていれば、いろいろなことを教えてもらえるし、発見もあるんだよ」

弘兼憲史『弘兼流 70歳からのゆうゆう人生「老春時代」を愉快に生きる』(中央公論新社)

2008年に亡くなられた、私の大先輩で敬愛する赤塚不二夫さんはそんな意味の言葉を残しておられます。

残念ながら、親しくおつきあいをする機会はありませんでしたが、この言葉通り、どんなときでも素直に「わからない」といえた方なのでしょう。

戦後ギャグ漫画の祖ともいうべき方ですが、その作品の根底には、果てしなく湧き上がる好奇心、そしてその好奇心に従って行動するパワーがあふれていたのではないでしょうか。もちろん、素直に学ぼうとする謙虚さもお持ちだったのでしょう。

想像の域を出ませんが、赤塚さんはいつでも「若い者は、面白いね」というマインドをお持ちだったのではないだろうかと感じます。

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