特許や研究結果を独り占めしない

Yコンビネータは「創業したばかりの段階の起業家やスタートアップ企業に資金を提供し、人脈の紹介や経営のアドバイスを行うシードアクセラレーターと称される投資会社です」(大手証券幹部)。いわゆる伴走型エンジェルファンドで、企業から株式の一部提供を受け、投資先の企業の価値が上がれば大きな利益を得る。

アルトマン氏率いるYコンビネータは、多くのスタートアップ企業に投資し、成功を収めた。その中には「Airbnb」「Dropbox」「Stripe」「Door Dash」など、世界的な企業が名前を連ねている。

アルトマン氏は19年にYコンビネータを退職するが、それまでの投資活動の中で、AIに大きな価値を感じるようになり、「オープンAI」に専念するという決断に至ったとされる。私生活ではベジタリアンで、10代の頃からゲイであることを公にしている。18年には住宅・医療政策に焦点を当てた政治運動「The United Slete」を立ち上げたほか、20年の大統領選ではバイデン氏の支援団体に25万ドルを寄付している。

そして「オープンAI」は15年に、アルトマン氏やイーロン・マスク氏をはじめとする著名な実業家・投資家によって設立されたAI研究機関で、特許や研究成果を一般に公開することで、人類の発展に貢献することを目標に掲げている。また、長期的にはAGI(汎用人工知能)の開発を目指すとしており、米マイクロソフトが出資している。

「チャットGPTを導入したい」閣僚が相次ぎ発言

岸田首相とアルトマン氏の面談を契機に、政府内では「チャットGPT」を行政分野で活用してはどうかとの議論が高まっている。国会答弁作成など事務作業が効率化され、国家公務員の業務負担の軽減が期待できるというのが理由だ。

松野博一官房長官は4月10日午前の会見で、「チャットGPT」の懸念点が解消された場合は「国家公務員の業務負担を軽減するための活用などの可能性を検討していく」と述べた。また、西村康稔経済産業相は4月11日の記者会見で「国家公務員の業務負担を軽減するための活用の可能性をぜひ追求したい」と語り、活用例として国会答弁の作成を挙げた。

河野太郎デジタル相も4月7日の記者会見で、「チャットGPT」に読み込んだデータの取り扱いや、事実と異なる文章が作成されるといった課題があるものの、懸念が解消されれば活用を考えていく意向を示した。いずれも「チャットGPT」の懸念が解消されることが前提となるが、導入に前向きであることに変わりはない。

では、実際に「チャットGPT」が導入された場合、霞が関の業務はどのくらい減るのだろうか。