「即レス」が求められるようになりつつある

LINEが普及し始めた頃、「即レス」「既読スルー」が話題となりました。即レスをしないといじめられる、即レスしないと嫌われる、既読スルーは関心のないサイン、などといったネガティブなコミュニケーションの行き違いも問題視されました。

当時わたしは、若者の話で自分には関係ないと思い、あまり深く考えていませんでした。ところが、今ではわたしも、関係ないというわけにはいかなくなってきました。LINEではなく、ビジネスチャットを使うようになったからです。

ビジネスチャットとは、ビジネスで利用するチャットツールのことで、組織のなかでのコミュニケーションを主な目的としています。メールよりも気軽に会話ができたり、テーマごとにグループを作成できるなどのメリットから、近年、導入する企業や組織が増えています。いろいろなビジネスチャットがありますが、わたしの研究室では世界でも代表的なビジネスチャット、“Slack”を使っています。ここでも、Slackについて、考えていきます。

Slackは、2013年に公開されて以来、世界中で急速に普及して、利用者を増やし続けているコミュニケーションツールです。はじめはエンジニアのかたがメインユーザーでしたが、徐々に一般のビジネスに広まっていきました。

かつてはSlackなんて……と思っていたわたしにとっても、今では研究室のメンバー、大学院生、卒業研究を控えた学部生とのコミュニケーションに、なくてはならないツールです。

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内容よりも返信速度を優先する意識がある

チャットでのやり取りによって、メールよりも会話に近い双方向のコミュニケーションが可能になります。また、ワードやエクセルなどファイルのやり取りは、LINEよりも(少なくともわたしのような中年にとっては)便利です。すべてメールでやり取りしていたら、莫大な数になってどうしようもなくなっていたことでしょう。

今の若い学生にとって、メールは見る頻度が少なかったり反応が遅かったりしてぎこちないツールなのですが、SlackはLINE並みに反応が早いのも、興味深い現象です。便利なSlackですが、頭の痛い問題があります。はじめに触れた「即レス」問題です。

Slack、ここでは国民的チャットアプリのLINEも含めましょう。これらはメール以上に「即レス」が基本です。わたしも、レスは早めにするようにしていますし、用件によっては、相手からのレスが遅いとイライラしたり、「ちゃんと見たのかな」と不安になることがあります。

こういったチャットアプリでは、レスが早い→仕事ができる、やる気があるという評価になりがちです。事実、遅いレスは、相手をイライラさせてしまうでしょう。「できる人はとにかくレスが早い」という、内容よりもレスのスピードを優先する意識が依然として根強いのも事実です。