子どもたちの現状と意向について調査が必要
子どもたちの生活は平時に移行していく重要な局面を迎えている一方で、あまりに長きにわたって学校で感染対策が事実上強制させられていたことから、平時に戻る際に一定の混乱が起こるかもしれない点には注意が必要だ。例えば、マスクについては大人であっても「外しても良いと思うが、周りの目が気になり外せない」といった方も多く、多感な子どもたちがどう考えているか、大人以上にうかがい知れない部分が多い。また、そもそも子どもたち自身が感染対策についてどう思っているのか、(それ自体ある種の政治的・行政的怠慢だと思うが)十分な資料がないのが現状だ。
そこで、筆者らは子どもやその保護者が学校で行われている感染症対策についてどのように思っているのか明らかにすべく調査を行い、主要な結果を2022年12月に学術誌から公表した(参考3)。調査対象者は小学校4年生から高校3年生までの合計5004人(556人×9学年)だ。調査はできる限り子ども自身に答えてもらえるように、調査会社に登録しているモニターにお願いをした。アンケートが実施された2022年6月末は感染が落ち着いていた時期であり、今後の学校の感染症対策の在り方についても一定の示唆を持つものと考えられる。
2~3割の子は「ずっとマスクを外したくない」
調査を集計してまず驚いたのは、場面によらず「これからもずっとマスクは外したくない」と回答した児童の多さだ。屋外では基本的にマスク不要という専門家の指針が調査当時からメディアを通じて周知されていたが、18%の児童は「これからもずっとマスクは外したくない」と回答している。電車や図書館などの公共性の高い場になると、この割合は3割に達する。学校においても、ポストコロナを迎えてもなお着用の意向は強く、25%の児童は授業中にマスクを着用すると答えている。属性別に見ると、着用意向は女児で強い傾向があった。
こうした結果は、長らく続いた感染対策の結果として、少なくない子どもの間で感染状況と関係なくマスクの着用意向が強く根付いていることを示唆している。マスクを外したくないという児童が一定数いることを念頭に、段階的に着脱のガイドラインを考えることが重要になるだろう。