給食時の黙食廃止は子どもの満足度を高める

さらに調査を仔細に見ると、一部の学校で既に黙食が廃止されていたり(調査対象者の7%)、先生によっては独自に「国語や算数の時間でもマスクを着用しないで良い」と生徒に伝えていたり(調査対象者の6%)していたこともあり、先生や学校の指導にもバラツキがあった。そこで、そうした指導が児童にどういった影響を与えるのか検証できた。

検証方法についてやや専門的な補足をすると、感染対策の実施状況は地域の感染状況などの交絡因子の影響も受けるが、たまたま任期中だった政治家の嗜好(e.g., 熊谷知事が黙食反対だったので黙食が廃止された)などで決まる側面も多く、地域属性を調整すればランダムな介入に近い側面もある。そのため、クロスセクションデータによる分析でも因果関係がそれほどバイアスなく抽出できている印象を個人的には持っている。

詳細は割愛するが、もっとも重要な結果として、黙食の廃止は「給食の時間が楽しい・満足」と感じる子どもを13.5%ptほど大きく増加させるようだった。また、マスクを外すことを許可する指導も、全般的には子どもの学校生活に関する満足度を向上させるようだった。

給食を食べ始める前に「いただきます」を言う小学生たち
写真=iStock.com/Milatas
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座学ではマスクを外したくないという意外な結果

こうした結果を見ると、一部に流布している「黙食やマスクにはデメリットがない」といった見解は間違いだろう。「学校が楽しい」「学校に満足している」というのは教育上重要なアウトカムと考えられ、感染対策を行うメリットとそれによって犠牲になる教育上のメリットは公平にてんびんにかけられるべきだ。多くの子どもにとって感染は数日の出来事にとどまるが、学校生活は毎日続く点も忘れてはならない。

全般的に感染対策を緩めることで児童の学校生活に対する満足感は向上するようだったが、一点注意すべきことがある。それは「強すぎる指導」についてだ。データを見ると、体育や音楽などマスクを外すことにメリットを感じやすい時間であれば、おおむね「マスクを外してもいい」という指導は児童から好意的に受け止められていた。しかし、国語や数学など座学の時間の指導は逆に「マスクを外したくない」という意向を強めるようだった。これは、筆者にとっては意外な結果だった。