妊娠すると歓楽街に売り払われる

下位カーストの貧困家庭が苦悩の末に娘を差し出し、現金収入を得る手段とする事例が後を絶たない。

1920年代に撮影された2人のデーヴァダーシー(写真=Bhadani at en.wikipedia/PD India/Wikimedia Commons

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のサティヤナラヤナ・ラマニーク博士(青年期保健学)は、実際にデーヴァダーシーの女性たちに聞き取り調査を実施し、結果を研究論文に著している。

それによると、買い手の男性は相当な投資を行ったとの感覚があるため、一定期間はデーヴァダーシーの女性と親密な関係を持つという。宗教儀礼という口実がある以上、女性側も家族に売られたという感覚を持ちにくい。売春の被害者だという意識が薄いことが多いようだ。

だが、妊娠すると男性の興味は薄れ、歓楽街に売られてゆく。同論文によると、聞き取り調査に協力した20人のデーヴァダーシーのうち17人が、性的サービスを主たる収入源にしていると答えた。そのほとんどが、過去1週間に5人以上の相手をしたと回答している。

また、これら17人のうち16人のデーヴァダーシーが、14歳から16歳までに風俗産業で働き始めたと答えた。

男たちに利用され、そして捨てられる

ガーディアン紙は、幼くしてデーヴァダーシーになったという26歳(取材当時)のパルヴァサマさんの事例を取り上げている。彼女は10歳で女神に捧げられ、しきたりに従い人間との結婚を禁じられた。思春期を迎えると競りに掛けられ、最も高い値を付けた男性に処女を買われたという。

インドの衣服や宝飾品を身に着けた2人の少女(写真=The India collection at the International Exhibition〈1872〉/PD India/Wikimedia Commons

14歳で妊娠し娘を出産したあとは、ムンバイの歓楽街に売られた。衰弱し、エイズを患っていることが判明したあとはそれ以上働くことができず、後ろ指を指されるのを覚悟で故郷の村に帰ることになる。

パルヴァサマさんの顔色は厳しい。「私たちはのろわれた共同体なのです。男たちに利用され、そして捨てられる」

気がかりは、娘の面倒を誰が見るのかという点だ。自分が働けなくなった以上、母娘とも将来は暗い。自身がデーヴァダーシーとしてつらい人生を生きた彼女だが、いま、わが子をデーヴァダーシーに出すよう真剣に考えている。