ケースの角はあえて直角にして強度アップ

また、交通ICカードなどを入れるポケットは、ケースの内側をウエーブ状にカットし、袋状に成形。これは見た目の美しさだけではなく、使っているうちに革が伸びてもカードが落ちにくい細工が施されている。

第二のこだわりは「強度」。GRAMASのケースの角は実はあえて直角になっている。これはスマホが角から落下した時、本体に衝撃が伝わりにくいという利点もある。ケースの中心となる部分の芯だけを抜いていることもまた、強度を上げる大きなポイント。これにより革の割れを防ぐことができると同時に、開閉もしやすくなる。

写真提供=坂本ラヂヲ
角に丸みのある一般的な手帳型ケース(奥)と異なり、GRAMASのケース(手前)は直角になっている。GRAMASのケースは、革の端を折ってからステッチを施す「ヘリ返し技法」で仕上げることにより、耐久性を高めている

値引きが当たり前の家電量販店でも販売開始

坂本氏の予想通り、顧客の中心層はスーツを着るシーンが多いと思われる30~50代の男性。職業はビジネスパーソン、経営者が40%以上を占めている(GRAMAS Official Shop 直近2年間のデータ)。

「2019年に発売した希少性の高い高級クロコダイルレザー『ヒマラヤ』を使用した28万円と、33万円のケースはすぐに完売しました。手間とコストをかけた商品の値段が高くなるのは当然。その価値をわかってくれる人は必ず一定数います。こうした結果から、“安いから売れる”という考えが必ずしも正しいとは言い切れないと思いました」(坂本氏)

写真提供=坂本ラヂヲ
上質なクロコダイルのなかでも、腹部から脇腹にかけての「ヒマラヤ」と呼ばれる部位を表面にあしらったiPhoneケース。内側には耐久性に優れた希少な象革を使用した(XS用28万円・XS Max用33万円、終売)

自身の感性を信じること。これもまた勝因の1つになったように思う。さらにプラスとなったのは「徹底したブランディング」だ。

高級感を維持するため、当初は「UNiCASE」や「AppBank Store」といったスマホアクセサリー専門店でのみ販売。強気とも言える値引き、返品なしという厳しい条件を提示しながらも、販路を徐々に拡大していった。人気が加速する2017年、某家電量販店が同条件でGRAMASの導入を開始。値引きが当たり前の量販店では稀有なことである。