社員すら「売れない」と予想していたが…
「これは私の『とにかくいいものを作りたい』という思いと、『日本人が求めるクオリティーを実現したい』という職人魂、そして双方の情熱に共鳴した“革オタク”の社長の思いが一致したからだと思います。実は今もサンプル代は無料なんです」
こうしてGRAMASの手帳型スマホケースは、製作を依頼する側、そしてそれを受ける製作側の「いいものを作りたい」という共通した思いをもって、2012年に完成した。当初は5000円だったが、「原価にとらわれず、自分が使いたいと思える心から欲しいもの」に集約して作った2014年発売の手帳型スマホケースの上代は、iPhone 6用が1万円、Phone 6 Plus用が1万2000円(ともに税込)となった。
社員からも「そんな高いスマホケースは売れない」とまで言われた通り、当初営業は大苦戦。一時は販売すら危ぶまれたが、「日本の人口1億人のうち、1000人ぐらいは自分と同じ感性の人がいるだろう」という坂本氏の考えのもと、販売に踏み切った。
すると瞬く間に完売となり、順調な売り上げを記録。その後、ユーザーからの意見を取り入れつつ、バージョンアップを繰り返す度にケースの値段が上がっていったが、売り上げは下がるどころか右肩上がりになった。年商28億円を記録したのは、発売からわずか5年目のことだった。
一枚革にこだわり、ベルトは絶対につけない
年1回のペースで発売される新作iPhoneのサイズや規格に合わせて新商品を発売しており、iPhoneを乗り換えると同時にGRAMASのケースを買い求める“常連客”も多いという。
では、iPhone14対応の最新バージョンをベースに、その数えきれないほどある坂本氏の手帳型スマホケースへのこだわりの中から、2つほど紹介しよう。
第一に考えたのは、当初に挙げた「スーツに合うスタイリッシュな見た目」であること。スマホをスーツのポケットに入れた際、シルエットが崩れないことを考慮すると、一枚革で作るのが適していた。革といっても何でもいいわけではない。ランクが高く、手になじむクオリティーの革を選んだ。
デザイン上、「絶対に付けたくない」と坂本氏が思っていたのが、ケースのふたを留めるベルト。理由は「所帯じみた雰囲気で、ビジネスシーンには合わない」から。それを実現したのが、ケースのフレームに仕込んだ磁石だ。ガウスを測り、ふたがピタッと閉まる基準の磁石を採用している。