日本の3倍高い「ロンドンのミキハウス」の反響
【原田】恥ずかしながら、ぼくはミキハウスの商品の品質が良くて、価格が高いことを知りませんでした。振り返ってみれば、うちの息子が小さい頃、ミキハウスのブレザーを着ていたなという記憶があります。
【木村】ミキハウスの商品は高いかもしれませんが、質がいいので長持ちする。プレゼントボックスでその品質の良さを実感してもらいたいと考えたんです。
ミキハウスはロンドンの(老舗高級百貨店)ハロッズに10年ほど前に出店しています。アルマーニとバーバリーの間にミキハウスがあったんです。私が視察に行ったとき、値札を見たら、ずいぶん高い。日本円に換算すると日本の3倍くらいの値がついている。
「これ、値付け間違えている」って指摘すると、店長からは「順調に売れています」という答えが返ってきたんです。
世界の富裕層から見れば、それくらいの価値のある商品だということを逆に教わりました。ようやく日本国内でも同程度の価格設定をできるようになってきたところです。
【原田】山陰のものづくりの現場でも同じようなことが起きていると聞きます。職人たちが食べていけないので、後継者が育たない。いい手仕事の作品、商品は正当な値段で売らなければならない。
「洗濯機を何台も潰す」ほどの耐久性
【原田】木村社長は創業当時から、品質にこだわっておられたと聞きます。
【木村】最初は一人で試行錯誤しながらやっていましたね。自分のところの商品がどれだけ耐久性があるのか確かめるために洗濯機を回し続けたこともあります。
ぼく、洗濯好きなんです(笑い)。洗濯機、何個潰したか分からんぐらい。だからこそ自信を持っています。
【原田】洗濯機からヒット作も生まれたとか。
【木村】あるときデニム生地を使い始めたんです。ところが、デニム生地は色落ちすることを当時のお客さんはみんな知らなかったんです。洗濯したときに白い洋服が染まってしまったと、クレームが来ました。
デニムが色落ちするのは当たり前なんですけれど、やっぱりそれを使ったこっちが悪いんです。それで洗濯して色落ちさせてから出荷することもしました。デニムって洗濯すると縮む。縮む分は計算しているんですが、少し皺になる。
新品なのにこれでいいんだろうかと、恐る恐る店に出してみたら「この皺がええ」って喜んでくれたんです。それで石ころ入れて洗濯機を回して独特の模様を出すこともやりました。
【原田】ストーンウォッシュですね。
【木村】ストーンウォッシュ加工には本当は軽石を使うんです。ぼくは普通の石ころを入れたから、洗濯機がすぐに駄目になった(笑い)。