カヌー羽根田選手からの一通の手紙

【原田】ミキハウスといえば、柔道や空手、卓球、アーチェリー、テニス、水泳などのアスリートを支援していることでも知られています。

東京五輪には11人もの所属選手が出場、空手女子の清水希容さん、レスリング男子の文田健一郎さんが銀メダルを獲得しました。こうしたアスリートたちはどんな観点で選んでおられるんですか?

【木村】いろいろなご縁もありますね。世界で活躍できる実力もあって、競技を続けていきたい気持ちもある。でもなかなかスポンサーもつかず環境や金銭面など一人ひとりさまざまな要因で競技を続けることが難しい。

東京五輪に出場したカヌーの羽根田卓也選手の場合は、彼から手紙が来たんです。それまでお父様がサポートしてくださっていたけど、ロンドン五輪までが限界だと。いろんなつながりのあるところに話を持ち込んだけど、断られたっていうんです。

【原田】カヌーはマイナースポーツなので露出が少ない。宣伝という観点で見るとあまり魅力的ではないかもしれません。

【木村】(大きく手を振って)うちは宣伝とか考えていません。調べてみたらロンドン五輪で7位入賞しているんです。そんな選手でも支援を必要としている状況でした。

彼の話を聞くと、将来のビジョンやプロセスが明確で、高校を卒業してから単身スロバキアに渡るほどカヌーに懸けていたんです。

その競技に対する強い想いを応援することにしました。そうしたら、リオデジャネイロ五輪で日本人初の銅メダルを獲った。その後は、以前断ってきた企業がスポンサーすると言い出したそうです。でも彼はそっちに行かなかった。

【原田】雨の日の友だちを大切にした(笑い)。プレゼントボックス提供も同じですが、社長の気持ち、強い想いを感じます。

社員の6分の1は外国人

【原田】今日、案内してもらって感じたのは、社内の雰囲気が明るいことでした。その想いが社員に伝わっている気がします。さまざまな国で店舗を展開していることを含めて、活力ある組織を作るために心がけておられることはありますか?

【木村】基本は会社の方向性を語りながら、できるだけ任せていく。海外展開では、いろんな国の人を採用し、日本で一緒に働きながらミキハウスの想いや方向性など学んでもらって、世界の各店を担当していただいています。

【原田】ミキハウスグループの社員のうち、外国人の比率はどれぐらいですか?

【木村】600人のうち、外国籍の方が100人超えているんじゃないですか。海外事業部は日本人はほとんどいません。

【原田】外国籍のスタッフを増やしていくきっかけは何かありましたか?

【木村】2010年の上海万博(上海国際博覧会)の頃でしょうね。ミキハウスとして上海万博に出展したとき、中国のスタッフを雇いました。そこから始まりましたね。

【原田】同じアジア人でも、育った環境が違えば少し考え方が違う面がある。そこに苦労はされませんでしたか?

【木村】逆ですね。

【原田】えっ、どういうことですか?