海外メディアは日本人の「オリンピック離れ」に注目

このスキャンダルを契機として、2030年冬季大会の招致に関しても否定的なムードが一気に拡散した。それまで半数以上の市民が支持していた札幌の招致活動にも、逆風が吹くようになった。

北海道新聞が12月中旬に実施した世論調査では、札幌市民の3人に2人が招致に「反対」または「どちらかといえば反対」と回答している。CBCは支持の低下を受け、「事件は大規模な汚職・談合の捜査へと発展し、札幌のオリンピック誘致は失敗に終わると考える識者もいる」と述べている。

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ワシントン・ポスト紙も同様に「東京2020大会に関連した汚職事件が、もう一度日本で大会を開催しようという熱意を希薄にした」と報じるなど、五輪招致への関心が低下している現状は海外でも取り上げられている。

元東京オリンピック担当大臣の橋本聖子氏は昨年12月、汚職疑惑への捜査に積極的に協力する意向を示す一方、札幌の招致活動は「非常に厳しいと思う」と述べている。現状では地元・札幌や北海道の住民の理解を得られないとする認識を示した。

これに慌てたのがIOCだ。通例冬季五輪の開催都市が正式決定する7年前を控え、昨年12月には1都市に絞り込む目算だった。ところが札幌のみならず、ほかの候補都市が次々と脱落し、有力なホスト候補がない異例の事態となったのだ。スポーツ関連のニュースサイトを主催し、オリンピック招致プロセスにも詳しいカナダのロバート・リビングストン氏は、CBCに対し、開催地選定の延期は「率直に言って前例がない」と指摘する。

ワシントン・ポスト紙によるとバンクーバーの辞退を受け、札幌と並んでソルトレイクシティが有力候補とされてきた。しかし、同じアメリカのロサンゼルスにおいて、2028年夏季大会の開催が決定している。2年と経たぬうちにソルトレイクシティで別の大会を開催することについては、アメリカ国内でも消極的な意見が相次いでいた。

IOCは日本人が汚職事件を忘れるのを待っている

IOCは開催都市決定の延期理由を、気候変動による影響などによるものだと説明している。だが、札幌の世論が沈静化するまでの単なる時間稼ぎではないかとの指摘がある。

カナダ・パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授(政治学)はCBCに対し、気候変動はIOCにとって「二の次、三の次」であり、贈収賄スキャンダルを受けた「時間稼ぎの類い」だと述べている。ボイコフ教授は、(東京大会の汚職をめぐる)刑事裁判の進行とともに有罪が確定してゆく可能性があり、こうなればIOCはオリンピックの組織的な問題ではなく、個人的な問題にすり替えやすくなると指摘する。