ところが、まるでIOCの目算に反するかのように、時間が経つにつれ新たな不都合な事実が浮かび上がってきた。開催費用の問題である。

AP通信は昨年12月、冬季大会の開催費用が1年前の見積もりよりも20%ほど増加し、1兆7000億円にまで膨れ上がる見通しであると報道。汚職が招いた不信感に加え、コスト面での課題が明らかとなった。

ワシントン・ポスト紙によると、夏季大会の平均超過コストは当初予算の213%にのぼるという。IOCが収益確保のために精巧な施設やイベントを義務付け、開催都市に費用を押し付けているためだと指摘。こうした事情を踏まえ、「IOCとの取引を希望する国がますます少なくなっている」と報じている。

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プーチンや習近平のような権威主義者に限られる

贈収賄はあくまで一部企業と個人が行った行為であり、大会側に直接的な非はないとする見方もある。だが、今回の贈収賄スキャンダルに世論が大きく反応した一因として、そもそも五輪を統括するIOCが日本国民から信頼を得ていない現状は無視できない。

東京2020大会を巡っては、IOCがむさぼる圧倒的な利権や、開催都市に過大な負担を強いる不平等な開催契約が取り沙汰され、批判の的となった。

米ワシントン・ポスト紙は2021年5月、IOCのトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵(Baron Von Ripper-off)」と呼び、氏とその取り巻きが「ホスト国をひどく傷つける悪癖がある」と指摘。日本国民の72%がコロナ禍での開催に抵抗を覚えるなか、開催契約を根拠に強行する姿勢を痛烈に批判した。

同紙によると、実際に東京大会では、開催契約には、日本側がオリンピック関係者に無料で提供するべき医療サービスが7ページにわたって記載されていた。コロナ禍で医療が逼迫ひっぱくするなか、約1万人の医療従事者を転用させる必要があるという内容だった。

当時、世界的なパンデミックの真っただ中だった。五輪開催を最優先として開催都市や人々を軽視するIOCの姿勢に支持が集まるだろうか。日本をはじめ各地で広がりつつある五輪忌避はIOC自らが招いた失策に他ならない。

さらに同紙は、もはやIOCと何らかの関係を持つであろう政府指導者は、ウラジーミル・プーチンや習近平のような権威主義者に限られると指摘する。名声のために人々に労働を強要し、無制限に支出できるからだ。これ以外の国については、過去20年間でホスト都市の候補は枯渇したとの指摘だ。