「かわいらしさ」の進化系

その結果、導き出された答えが、初代の開発当時から時代を経て進化した「かわいい(かわいらしい)の時代進化分」だけを、デザインに反映すること。

そこで、フルモデルチェンジでは、初代ムーヴキャンバスのかわいらしさに「すっきり・洗練」の“エッセンス”を加え、細かな部分に“凝っている”といった遊びゴコロをプラスした。

具体的には、スマイルフェイスを残しつつ、線づかいを減らしシンプルに。また、ロゴも「すっきり・洗練」に似合うアルファベットに変えました。

写真提供=ダイハツ
左が初代、右がサイドモールを配した新型

これなら、若い女性が「なんとなくスッキリしていて、かわいい」と感じる一方で、大人世代も「ちょうどいい、かわいらしさ」だと、進化した「かわいらしい」に気づいてくれるはず、との思いを込めたそうです。

1:5の法則

マーケティングの世界には、有名な「1:5の法則」があります。

既存顧客とはまったく別の新規顧客に、ゼロからモノを売ろうとすれば「5倍ものコストがかかる」とする概念。提唱者はライクヘルド、米国コンサルティング会社(Bain & Company社)でディレクターを務めた人物でした。

一般に、人や企業は短期的な販売目標やノルマを達成しようと思うと、つい新規顧客の獲得にばかり目を向けがちです。

ですが、そこから始めるとなれば、まず自社商品を認知してもらう必要があります。マス広告を打ち、手あたり次第にDMを出し、セミナーやイベントを実施し、信頼関係をゼロから醸成し……と大変な手間と時間(コスト)がかかる。

ライクヘルドは、そうしたコストを省くためにも「新規よりまず、既存顧客を大切にすべき」だと説き、その際に「顧客ロイヤルティ」に注目せよ、としました。

すなわち企業や商品、サービスに対する既存顧客の“愛着と信頼”を示す指標。この指標を上げることでリピート率が向上し、単価も上がり、ひいては新規顧客への口コミも呼べると言われます。