茶道では、どんな時にも落ち着いて行動し、何事にも臨機応変に対処する心構えがあります。

海外でのお茶会では、様々なハプニングがありました。

荷物が届いていなかったり、会場が設営されていなかったりする場合もありましたし、受付人数の倍のお客様がお茶会にいらしたことや急にお茶会を開いてほしいというご要望もありました。

海外でのお茶会では日本にいる時と違って、お抹茶やお菓子やお道具が足りなくても、近所ですぐに購入することができません。

そこで、常に不測の事態に備えて、何があってもお客様にご迷惑にならないように、喜んでいただけますようにと準備を怠りません。

何かあっても心の中で、「大丈夫、大丈夫」とおまじないをして、その時にできる最大のことをして、お客様にもお喜びいただくことができました。

ビジネスでもお客様を不安にさせないように、起こりうる事態を想定し、あらかじめ予防策をたてておくことは大切です。

どんな時でも臨機応変に対応できるように、お客様のために万全の備えをする。備えあれば憂いなしです。

お茶会で「お先に頂戴します」とひと声かける理由

相客に心せよ(お互いに尊重し合う)

「相客」とは同席したお客様のこと、「心せよ」とは気を配りなさいということです。

「同席したお客さまに気配りをしましよう」という意味を表します。

つまり、同席したお客様同士がお互いに気遣い、尊重し合い、共に楽しいひとときを過ごせるよう思いやることで、より心地よい空間になるという教えです。

これまでは、おもてなしをする亭主側からお客様への心遣いを記していましたが、ここではお互いに尊重し合い、思いやりを持ちましょうと記しています。

一方的に亭主だけが気を配ればよいというわけではなく、おもてなしを受けるお客様も共に、相客に配慮したり他者を思いやったりする気持ちが大切なのです。

例えば、一人の身勝手な振る舞いが周りの人々に不快感を与え、楽しいはずのお茶会が台無しになってしまうこともあります。

お客様同士もお互いに尊重し合うことで、よりよい、特別な空間となるのです。これは、一期一会の精神でもあります。

お茶会では、お菓子やお抹茶をいただく際に、お隣りの方に「お先に頂戴します」とひと声かけます。また、お抹茶を点てて下さった亭主にも「お点前頂戴いたします」と感謝の言葉をかけます。

お互いを思いやり、尊重することで和やかなお席となります。