忍術書は、日本各地にまだあるはず

2022年現在、山田さんが取り組んでいるのは、アメリカの議会図書館に所蔵されている忍術書の解読。戦前は日本の陸軍の参謀本部にあった資料で、GHQが接収してアメリカに持っていった資料だ。こうして世界各地に忍術書があることも驚きだが、日本各地でもまだ忍術書が見つかるはずだと山田さんは考える。

五十嵐杏南『世界のヘンな研究』(中央公論新社)

「おそらくまだ日本国内に資料がたくさんあるはずです。それに加えて、いろんな藩の資料に忍者のことが書いてあるので、どうしてこれまで忍者に着目して研究がされてこなかったのだろう、という思いはあります。ですが昔は忍者というと、いい加減で怪しいというレッテルが貼られていたために研究がされてこなかった。あまり手がつけられていないから、自分たちが開拓していろんなことをやれるのは嬉しいですね」と山田さんは話す。

「日本各地でポツポツと見つかる資料を読み込んでいくと、内容が違うんです。地域独自のやり方があって、その差異を探していくのが面白いです。例えば、長野の松代藩に伝わっていた真田さなだの忍者の忍術書を調査した時は、兵糧丸に蕎麦粉を入れて作っていたことがわかったんです。ああ、信州だからそうしているんだ、というのがわかって、そうした地域の独自性もですし、忍術だけではなく組織の編成の仕方も一律ではないので、地域独自のやり方を明らかにしていけたら面白いなと思っています」

忍術はただの怪しい行いではなく、一国の存亡に関わる重大任務だった。かつてそんな責任を負った忍者の研究は始まったばかりで、やるべきことは、まだまだたくさんある。何世紀も前に生きた忍者たちは、もっと私たちに教えてくれることがあるだろう。

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