法の網をすり抜け、ますます悪質化している

また、連合(日本労働組合総連合会)が同居している子供がいる全国の25~49歳の男性労働者1000人を対象に19年に実施した調査によると、実際に育休を取得した男性(72人)のうち、20.8%が「パタハラを受けた経験がある」と答えた。

奥田祥子『男が心配』(PHP新書)

13年に行った調査ではパタハラの詳しい内容についても尋ねており、子育てのための制度利用について、「認めてもらえなかった」「申請したら上司に『育児は母親の役割』『育休をとればキャリアに傷がつく』などと言われた」「制度利用をしたら、嫌がらせをされた」の順に多かった。

固定的な性別役割分担意識が根強いことが、パタハラを行う上司の発言にも現れている。そして筆者が近年、相次いで事例に遭遇し、その深刻さを痛感しているのが、私が取材したほかの事例でもあったが、育休取得から一定期間を経た後、それまでの経験やスキルを生かせない畑違いの部署に異動させるなど、本人にとって理不尽とも言える処遇を与えるケースが増えていることである。

こうした実態は報道されることはなく、ほとんど知られていない。先にも述べたが、育休を取得したことを契機としている、つまり処遇との間に因果関係があれば、違法行為である不利益取扱いにあたる。だが、育休取得から異動までの間に一定の期間を置くことで、法の網をかいくぐっている可能性もある。パタハラはますます悪質化しているのだ。

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