TVerでリアルタイム配信を始めても勝ち目は薄い

孫はテレビなど見たくないから「じいちゃん、これ、変えていい?」と言ってネットコンテンツを視聴する。祖父母もテレビは習慣的につけているだけだから、孫に明け渡すのを躊躇しない。こういう状況を想像すれば地上波が「オワコン」と呼ばれても仕方がない。ほとんど高齢者層しか見ていない状況では、やはり広告はつきづらい。

生き残りに必死なテレビ局は、TVer(民放公式テレビ配信サービス)を通じて、ネットに転向する動きを見せている。最近は民放5系列のリアルタイム配信もスタートした。経営陣もTVerを通じてネットに対抗する方向性を打ち出しているが、すでに定着した視聴環境を変えられるほど根付いているとはやはり言えない。

タイアップまみれの地上波コンテンツは飽きられている

もっともネットでも、Hulu、ネットフリックス、ディズニープラスなどのストリーミングサービスが乱立してコンテンツ不足に陥っており、これから淘汰が始まることも予想される。

ネットがテレビを凌駕するのは、結局は地上波にはないコンテンツがあるからであって、さまざまな媒体から視聴するコンテンツを選べる時代にあっては、いかに良質な番組を提供できるかが勝負となる。その意味では作り手の実力がダイレクトに結果に現れる時代と言える。

そうした時代に、制作費欲しさにメーカーとコラボレーションをするような番組作りでは視聴者に飽きられてしまう。同じことは、テレビはもちろん、新聞も雑誌もやっている。

フードコンサルタントと食品メーカーが組んでアレンジレシピなどを紹介し、「この商品はいいですよ」とタイアップする料理バラエティ番組は結構目にする。

本来、放送法では広告と番組は切り分けなくてはいけない。見えない広告、ステルス広告はやってはいけないことになっている。ところがタイアップという名目で堂々と打ち出しているケースが多い。広告目的であるなら、それとはっきり分かるようにしなければ放送法違反となる。

放送法12条:放送事業者は、対価を得て広告放送を行なう場合には、その放送を受信する者がその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない。