「なんだ、広告か」気づいた瞬間に若者は視聴をやめる
この条文をタイアップの番組に当てはめてみると、ブラックに近いグレーと言えるのではないか。そうした広告目的主体のタイアップ番組など、今の若い人はお見通しである。子供の頃から動画コンテンツを見慣れているから、「なんだ、広告か」と気付くのは早い。バレた瞬間に視聴するのをやめる。
巧妙にやってもバレるのであれば、逆にこれはCMと分かるようにして、CMを楽しんでもらおうという発想も出てくる。典型例が「ジャパネットたかた」だ。自社で作った商品セールス動画を放送局の枠を買って放送している。制作はジャパネットたかた、全編CMという番組だ。このように今のテレビを支えているのは「広告のようなもの」なのである。
五輪のテレビCMを降りて自前メディアを持ったトヨタの慧眼
タイアップがかつてのようにうまくいかなくなっている状況を何とかしようと考えているなかで、クライアントは「じゃあ、自分でメディアを作って宣伝すればいい」という発想が生まれる。それを実践したのがトヨタ。東京五輪のテレビCMから降りた同社だが、自社の媒体「トヨタイムズ」を立ち上げてPRしている。
その背景には歪んだ報道にお金は出さない、自分たちでコンテンツを制作して、自分たちでアピールしていくPR型を考えて当然だろうという新しい考え方と気概がある。元テレビ朝日の富川悠太アナウンサーがトヨタに入社しており、「トヨタイムズ」に加わっている。
世界のトヨタだけに資金も潤沢にあり、企業の新しい広告の方法という意味では興味深い。もっとも「トヨタイムズ」で活躍していた俳優が、夜の銀座で狼藉を働くリスクは、さすがにトヨタの幹部も予想しなかったかもしれないが。