まず、お客さんとは何かを考えました。

経理の場合のお客さん(後工程)とは誰かといえば、決算の数字の説明を聞く人と設定しました。経営陣、IRの関係者、そして何よりも株主です。

そうして、モノと情報の流れ図を書いていったら、決算の仕事にはたくさんの標準作業があることがわかりました。3カ月間、調べて770もの標準作業があると分析できました。そのなかで、「どうして、この仕事をするの?」というものが全行程の10パーセントあったそうです。

図版提供=トヨタ自動車
上の図を見た担当がカイゼン点を記入したもの

「昔からやっているから」という考えは捨てる

これはトヨタに限りません。経理だけの問題でもありません。毎日、当たり前のようにやっている標準作業の10分の1はすでに時代と状況に合わなくなっているのです。例えば、書類を郵送する、ハンコを押すといった作業はどこの会社でもまだ少しは残っているでしょうけれど、それはもういらないもの、やめるべき仕事になっているのです。

この場合、「これくらいは残しておいていいじゃないか?」という考え方はするべきではありません。やめると決めたものはすっぱりやめる。また、昔は先輩たちがやっていたけれど、今はやっていないという標準作業もやめるべき仕事の筆頭です。

ただ、これは自分たちだけで判断できる仕事ではありません。トヨタにおける生産調査部のような、他人の目で見てもらわなければなかなか自分の仕事を自分で切ることはできないのです。「自分がやっている仕事はやらなきゃいけない仕事だ、正しい仕事だ」と思っているからこそ、みんなやっているからです。

モノと情報の流れ図を作るのは、そういう自分たちの従来の仕事を信じている人たちに客観的な視点からの姿を見せるためです。

仕事には前の工程があって、また、後の工程があることをわかってもらいます。そして、自分たちの工程だけが生産性を向上させても、それが全体にどうかかわっているかを目で見てもらわなければ人は納得しないのです。

自分が現在、やっている仕事を自分で日々、カイゼンできる人は本当のプロフェッショナルだと思います。