デジタル給与振込で陥る落とし穴にも要注意

もう少し踏み込んで、デジタルマネー給与のリスクについても考えてみましょう。

注意1:キャッシュレス化のやりすぎで財布がゆるくなってしまうパターン……現金を持たないことはキャッシュレス決済の便利さですが、財布がゆるく、管理があいまいになることが難点です。

1万円札が「崩れる」こと、残りの千円札の枚数が「少なくなる」ことは、シンプルに消費を抑える効果がありました。キャッシュレス決済はこれを失わせました。

現状でも、支出について自覚的になったり、家計簿アプリなどで管理したりする必要がありますが、クレカや銀行預金からチャージするタイミングが「今、お金を動かした」という感覚をかろうじてもたせてくれたわけです。

対策としては、「今月振り込まれた給与分で1カ月分をやりくりできるように生活する」とすることが考えられます。「無制限にチャージして使っていたら、翌月クレカ請求をみてびっくり」となるよりはいいでしょう。

注意2:給与振込額のほとんどを入金して、貯蓄や投資に回すお金を減らしてしまうパターン……iDeCoやつみたてNISA、積立定期預金など、貯蓄や投資に回す額のほとんどは銀行預金からの引き落としで行われます。全額をデジタル決済振込としてしまうと、そうした予算が消える恐れがあります。

QRコード決済での利用は基本的に日常生活費です。スーパー、コンビニ、ドラッグストアなどの決済には向いていますが、資産形成向きではありません(PayPayアプリのように証券口座と連携するものもありますが、本腰を入れているとは言い難い)。

この点については、全額を電子マネーとして受け取らない、とすれば解決します。「銀行預金への振込額」のほうに将来への積立額分はキープするようにして、電子マネー振込は日常生活分にとどめておくようにすればいいいでしょう。

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注意3:特定の「○○Pay」に利用が集中してしまうパターン……「○○Pay」といえば高額還元率のキャンペーンが魅力です。さすがに無制限20%還元のような大規模プロモーションはもうありませんが、最近ではPayPay、d払いなどが地方自治体と連携し、地元商店街で利用すれば20%還元のような取り組みが期間限定で行われていたりします。

このとき、他の決済方法に1カ月分のお金が入金されていたとしたら、みすみす高還元を逃すことになります。わざわざ現金出金して(最低でも月一度は無料でできる)、別のQRコード決済にチャージし直すこともできますが、面倒が勝って普通はやらないでしょう。

かといって、給与振込口座としての「○○Pay」をひんぱんに変更することは現実的ではなく、従来通りの「クレカないし銀行から、お得な○○Payへチャージ」のほうがラクかもしれません。

注意4:カジュアルな借金には手を出さないこと……「注意2」で貯蓄や投資額が減少するリスクを指摘しましたが、むしろQRコード決済各社は、少額のキャッシングとQRコード決済を連携させたがっているようにみえます。d払いには「dスマホローン」、PayPayには「PayPayローン」があって最初の画面から数タップで審査まで移動できるようにアイコンを配置しています。

かつては借金するためにコソコソと無人店舗に行くというハードルがあったわけですが、スマホの操作だけなら人目を気にせずできてしまいます。給与振込日直前で懐が寂しくなった時などに、軽い気持ちで少額の借金をするとこれはズルズルと借入残高を増やし続けるスパイラルに陥ることになります。注意したいところです。