QRコード決済で金融ビジネスに進出
JR西日本は、2024年度にもスマートフォンを使ったコード決済サービス(スマホ決済)を始めると報じられた。これまで交通系の電子マネーといえば、JR東日本の“Suica(スイカ)”、JR西日本の“ICOCA(イコカ)”をイメージすることが多かった。
しかし、最近、わが国でもQRコードなどを使って決済を行うことが増えている。海外からの観光客の増加や、当事者である事業者にとっての導入のしやすさもあり、わが国でもQRコード決済の導入に弾みがつき始めた。
それを足掛かりに、JR西日本は金融、特にIT先端技術と金融ビジネスを結合した“フィンテック”分野での取り組みを強化した。同社は新しい金融関連のサービスをスマホのアプリ上で提供し、コストの削減や鉄道以外の分野で獲得できる収益を増やそうとしている。
今後、人工知能=AIの利用増などを背景に、世界経済のデジタル化は加速する。JR西日本以外にも、フィンテック企業などと連携を強化し金融ビジネスに参入するわが国の非金融分野の企業は増えるだろう。日本銀行などが“中央銀行デジタル通貨(CBDC)”の研究を進めていることも、そうした変化を勢いづける要素になる可能性は高い。
コロナ禍で収益分野の拡充が喫緊の課題に
近年、JR西日本は決済などの金融ビジネスと、交通や日常生活での買い物および旅行など既存分野の結合を強化した。今回報道されたスマホ決済のサービス提供は、そうした取り組みの強化を狙ったものといえる。JR西日本はわたしたちの生活に必要なより多くのサービスをデジタル空間内で完結しようとしている。
2020年9月、JR西日本は、その出発点となるべき発表を行った。東日本旅客鉄道(JR東日本)との連携だ。JR西日本は発表したばかりの“WESTER(ウェスター)”アプリと、JR東日本のアプリとの段階的な連携や共同でのキャンペーン告知などを検討すると明らかにした。目指したのは、収益獲得領域の拡大だ。
きっかけの一つとして、コロナ禍の発生は大きかった。感染の再拡大は長引いた。JR西日本をはじめとするわが国の企業は、人口減少などを背景とする需要の縮小均衡という変化に、前倒しで対応しなければならなくなった。コロナ禍によって鉄道輸送の需要は大きく減少した。一時、インバウンド需要も蒸発した。