給与振込先は2カ所可能で、1つは電子決済を選べる

まず、確認してほしいことはデジタル給与支払いが強制されるわけではない、ということです。選択の自由が増えるのはいいことですが、銀行振込が選べないようになり電子的給与振込のみ、というのでは困ります。厚生労働省の審議会資料でも「使用者が労働者に強制しないことが前提」という文言があります。「選択できる仕組みだが、事実上強制される」というのもダメです。

「事実上の強制」のひとつとして、給与振込口座の銀行指定があります。「うちのメインバンク、あのM銀行なので、M銀行にしてくれる?」のようなお願いをされるパターンです。新卒社会人などは4月に就業時間内に会社の指示で支店に行って、銀行口座開設をすることもあります。

本当はこれもダメなのですが、現実問題として不利益がほとんど出ないので追求がしにくい状態となっています(会社側としては、振込手数料や事務負担の軽減になり、自分の銀行口座を持っていなかった新卒社会人には口座開設のきっかけとなるため、双方にマイナスがない。ついでにメインバンクは新社会人口座獲得にもなる)。

とはいえ、現実問題として、全員に電子決済への振込のみを強制をすることは難しかろうと思います。クレジットカードの引き落とし、公共料金の支払いなど銀行口座が軸になっている取引をゼロにすることは困難だと、社長も人事部長も理解できるからです。

タブレット端末を操作する人の手元の上には複数のドルのマーク
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となると、導入初期の企業のパターンとしては「2カ所に給与振込選択が可能で、その1つとして電子決済を選べる」ということになるはずです(中堅企業・大企業などでは、2つの銀行を振込先に指定できることが少なくない)。