外食企業の消耗戦が与えた影響

外食企業による消耗戦は経営の余裕を奪い、様々な問題を誘発した。07年には、不二家の工場でシュークリームの原料として消費期限切れの牛乳を使用していた問題が明らかになった。不二家は外食産業の黎明れいめい期にサービスの質の高さや店舗数で隆盛を誇った歴史を持ち、ロイヤル創業者の江頭氏が1955年に「不二家をしのぐ」との目標を掲げるほどの存在だった。

当時の報告書によると、廃棄がためらわれる環境にあったことが原因だった。牛乳自体は超高温で殺菌されており、食べた人の健康に影響を与えることはなかった。とはいえ、会社の方針としてコストダウンが強く打ち出されており、品質管理が二の次になっていたことは否めない。

鷲尾龍一『外食を救うのは誰か』(日経BP)

同じ07年、高級料亭の船場吉兆が商品に別の高級産地のラベルを付けて販売した産地偽装問題が発覚する。さらに船場吉兆の外食店舗でも、客が手を付けなかった料理を別の来店客に提供していたことが明らかになった。著名企業や老舗が起こした不祥事で、消費者の外食産業に対する信頼は揺らぎ始めた。

13年には阪急阪神ホテルズでメニューと異なる食材を使用する偽装表示問題が起きた。同社は当初「誤表示」と説明したが、最終的に偽装だったと謝罪。初期対応のまずさで傷を深くした。不祥事を起こすだけでなく、原因を追究しないままごまかそうとする姿勢は外食産業全体の未熟さを象徴していたとも言えそうだ。

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