政府は7年ぶりに冬季節電要請を実施

現に政府は、2015年以来7年ぶりに冬季(22年12月1日〜23年3月31日)の節電要請を行うことを決定した。閣議後の記者会見で西村康稔経済産業大臣は、「電力需給は厳しい。想定した需要が上振れするリスクもある」と述べた。

要請内容は各家庭に対して、室内で重ね着をするなどして、無理のない範囲で節電することを求めるもので、東京都の小池百合子知事がタートルネック着用を呼びかける「奇策」を発表し、話題となった。

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この節電要請は全国を対象にしているが、その焦点が東日本にあることは明らかである。

資源エネルギー庁も、12月の基本政策分科会で配布した資料(「エネルギーの安定供給の確保」、2022年12月16日)の中で、今冬の電力供給予備率について、「(23年)1月の東北・東京エリアでは4.1%となるなど、依然として厳しい見通しであり、大規模な電源脱落や想定外の気温の低下による需要増に伴う供給力不足のリスクへの対策が不可欠」、と記している。

電力危機対策の「切り札」は原発活用?

同じ資料では、電力供給予備率の見通しが上方修正された理由についても言及している。具体的には、「本年6月以降、追加供給力対策の実施や、3月の福島沖地震で停止していた火力発電所の復旧見通しがついたこと、電源の補修計画の変更、原子力発電所の特重施設[特定重大事故等対処施設]の設置工事完了時期の前倒し等により、マイナスだった今冬の予備率は、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通し」、と述べているのである。

ただし、厳密に言うと、この文言には、ややミスリーディングな箇所がある。と言うのは、原発の特重施設設置工事の前倒しは、電気事業者の手によって、政府が追加供給力対策を実施する以前から取り組まれていたからである。つまり、いったん再稼働を果たしながら特重施設設置工事のため運転を停止した原子炉を擁する電気事業者は、23年1〜2月に再びそれらを稼働できるよう、準備を進めていたことになる。

電力危機への対策として、政府が特に力を入れてきたのは、原子力発電の活用である。岸田文雄首相は、22年7月に、23年1〜2月の電力不足を乗り切るために、9基の原発を動かすと宣言した。

さらに、1カ月後の8月には、原子力規制委員会の許可(原子炉設置変更許可済み)を得ながら再稼働を果たしていない7基の原子炉について、23年夏・冬以降の再稼動を実現するとの方針を表明した。