それでもラスト・ジェネレーション擁護派は多い

ところが、ドイツ・プロテスタント教会のトップであるアンナ=ニコル・ハインリヒ議長は、そうは思わなかったらしい。彼女は11月初めにマクデブルクで行われたプロテスタント教会の総会において、道路封鎖は市民による合法的な抵抗運動であるという見解を述べた。そして、彼らとの話し合いの場を提供するため、総会にラスト・ジェネレーションの幹部を招待した。

そのため、これに驚愕したノートライン=ヴェストファレン州のCDUの議員たちが、ハインリヒ氏の辞任を要求して立ち上げたのが、冒頭の署名運動だ。ただ、実際問題として、プロテスタント教会と各種NGOとの結束は、すでにここ数年、異常に強くなっている。ラスト・ジェネレーションはNGOとして登録されてはいないが、しかし、在米のある大型ファンドから潤沢な資金援助を受けていることもわかっている。

ドイツ首相も抗議活動を黙認?

さらにいうなら、ドイツでは主要メディアがこぞって左派だし、市民の中にも、このラスト・ジェネレーションのような極左活動に対して少なからぬシンパシーを感じている人たちが、相当数存在する。

そして何より、社民党や緑の党が、ラスト・ジェネレーションに甘い。ショルツ首相は、「今回の抗議活動が(結果的に事故の救助を妨害したことで)、大きな喝采を得られなかったことは明確だ。彼らは私の喝采も受けていない」とコメントし、ベルリン警察が、首相はラスト・ジェネレーションを擁護しているに等しいと怒りをあらわにした。それどころか国連のグテーレス事務総長は、「デモをしている若者の怒りと不満を共有する」そうだ。

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つまり、現在のドイツでは、プロテスタント教会のトップだけが例外なわけでは、決してない。

政治の理解と潤沢な資金、教会の保証まである

その上、現在の社民党のショルツ政権では、一番力を振るっている緑の党がラスト・ジェネレーションと意見が一致しており、道路封鎖についても大いに理解がある。今回の自転車事故の悲劇についても、ラスト・ジェネレーションに罪がなすりつけられていることには不服そうだった。渋滞は道路封鎖でなくても起こるからだ。

そもそも緑の党の考えでは、遅々ちちとして進まない気候政策に対する強い焦りと絶望感が、若者たちをこのような過激な抗議活動に駆り立てているのである。つまり、われわれが危急にすべきことは、彼らの声に耳を傾け、一刻も早くドイツのカーボン・ニュートラルを実現させ、惑星を救うことである、となる。

こういう政治の援助と、潤沢な資金援助と、教会の倫理的保証があるからか、ラスト・ジェネレーションは強気だ。ミュンヘン国際空港に不法侵入し、滑走路に貼りついたのも、ベルリンでの事件後の話だった。空港の金網をニッパーで切っている様子などの映像がネットに上がっているが、闇夜に乗じての話ではなく朝である。しかし当局からは、なぜ、こんなことが可能なのかの説明がない。ドイツの国際空港にはニッパーひとつで誰でも侵入できるということか?