イベルメクチンの個人輸入は、いわば強欲の結果です。

普通の日本国民はコロナで苦しんでいても、イベルメクチンの効果を知っている自分だけは助かる、と思っているのです。

また、普通の日本国民はおろか、医師や規制機関もみんな間違っていて、自分だけが正しいと考えるのは、ある種の過信、思い上がりです。

少なくとも書き込みを見る限り、「人より優位に立ちたい」「知識を誇りたい」「自分こそがスタンダードだと思いたい」といった欲望が、人々をイベルメクチンの個人輸入に導いているように思えるのです。

異様な文化のあわれな被害者

イベルメクチンはコロナには効かないので、個人輸入してもなんの得にもなりません。明らかに損です。お金はまちがいなくムダになっているし、副作用が出ている人もいるかもしれません。

ただ、だとしても、自業自得だと責められるべきなのでしょうか。

過信と強欲はそもそも誰のせいでしょうか。

データを捏造して「イベルメクチンがコロナに効く」と主張した人や、確たる証拠もないのにイベルメクチンが効くと宣伝した人、ノーベル賞受賞者のイベルメクチンに期待するという発言を検証もせず広めた人に、責任はないのでしょうか。

写真=iStock.com/Ranta Images
イベルメクチンが効くと宣伝した人に責任はないのか(※写真はイメージです)

そもそも、「人が知らない医学知識を自分だけが知っている」と自慢する異様な文化はなんなのでしょうか。

筆者には、イベルメクチンも個人輸入も(そしてこの記事では取り上げる余裕がありませんが反ワクチンとか自然派とか代替医療はすべて)この異様な文化のあわれな被害者に見えます。