あらゆるニセ医学に共通の構図

あらゆるメディアが、学校でさえも、「もっと医学知識をつけましょう」「自分の体は自分で守りましょう」「ほかの人より健康になりましょう」と教え続けています。

医療職ではない人がクスリの効果に詳しくなっても、あまり意味はありません。処方の権限は医師に握られていますし、医師は保険のルールに縛られています。

クスリの情報を知っても、自分では処方できないのです。

しかし、こうした情報に接した人が、個人輸入でクスリを手に入れようとします。

あらゆる「ニセ医学」にこうした構図が共通しています。

「もっと健康に気をつけましょう」という強迫観念が世間に蔓延まんえんしていますが、気をつけたからといって本当に健康になれることはほとんどありません。せいぜい禁煙くらいです。

それでも「健康に気をつけよう」と考える人は、ニセ医学に出会うのです。

写真=iStock.com/Charday Penn
「健康に気をつけよう」と考える人はニセ医学に出会う(※写真はイメージです)

ひとつひとつの健康情報は、専門家が善意で広めたものかもしれません。中には事実に基づくものもあるでしょう。

しかし、その情報が人の心を迷わせてしまいます。これは「善意の罠」とも言うべきものです。

こうした「善意の罠」に陥らない方法は、健康情報に近寄らないことしかありません。

本当に知るべき重要な情報は、こちらから探しに行かなくても、逃げ場もないほど繰り返し教えられるはずです(それすら重要ではないと思う人もいるでしょうが)。

わざわざ探さないと見つからない情報というのは、誰も気づいていないお得な情報ではありません。評判が悪く、間違っていて、リスクのわりにリターンが少ないから広まっていないのです。

健康になろうとするのをやめましょう。情報を集めるのをやめましょう。

その先には「自業自得」しかありません。

筆者は医師として、治せない病気を持つ人に会って、「あきらめてください」と言わざるをえないことがあります。そのたびに無力さを恥じています。

しかしそこで「あきらめなくていい」と偽りの希望を与えるのは、余計悪いと思います。

医薬品の個人輸入も、そういうものになってしまっていると思うのです。

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