「やせ薬の美容目的処方」日本糖尿病学会が反対

ちなみに筆者は日本人がこんなにやせたがっていること自体がおかしいと思っています。やせるクスリを個人輸入している人に必要なのは、クスリではなく、心理的あるいは社会的なサポートという場合もあるでしょう。

医師として気軽におすすめできるやせ薬は存在しませんが、一部の人に期待されているクスリとしては、2022年11月に承認了承された「アライ(一般名オルリスタット)」や、「肥満症」に対する医療用医薬品として承認申請中のセマグルチドなどがあります。

セマグルチドやそれと同様の作用を持つクスリは、糖尿病の治療薬として日本でもすでに使われています。食欲を抑え体重を減らす「副作用」があるので、筆者もよく処方します。第一選択薬とされるメトホルミンが使えないか効果不十分であり、しかも食べすぎで体重が増えがちな人には、セマグルチドが役に立つ可能性があります。

セマグルチドを美容目的で処方する医師もいるようですが、日本糖尿病学会は安全性の観点から反対意見を示しています。

アライについても「要指導医薬品」という分類とされ、薬剤師の助けのもとで使うことになっています。

筆者はやせ薬の危険性を強調したいわけではありません。ただ、太っていても楽しく過ごせる文化を作るほうがはるかに大切だと思っています。

しかし、安全かどうかわからないやせ薬を買っている人がたくさんいるのが現実です。そのため、何らかの安全策は必要だと思います。

写真=iStock.com/Evheniia Vasylenko
安全かどうかわからないやせ薬を買っている人がたくさんいる(※写真はイメージです)