「インド風精力サプリ」で鉛中毒に

「でも入院するほどの副作用なんてめったに出ないでしょう?」と思われるかもしれません。

たしかに深刻な副作用は、(本物のクスリなら)まれです。

しかし、おおぜいの人が、何度もクスリを飲むうち、いつかだれかが、そのまれな副作用に見舞われてしまいます。

2021年、「Penisole」という名前のサプリをシンガポールから個人輸入した埼玉県の人が、そうした健康被害に遭ったと報告されています。

このサプリのパッケージにはデーヴァナーガリー文字で製品名が書かれ、「アーユルヴェーダ」の言葉とともに、精力増強などの作用があると伝えられる薬草の名前が並んでいます。その中身からは1カプセルあたり12mgの鉛が検出されました。

この事例では、貧血・腹痛・手のふるえといった、医師国家試験に出そうな典型的な症状を手がかりに、「鉛中毒」という診断がつき、無事に回復したようです。

「インド風精力サプリ」で鉛中毒に(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Francesco Scatena
「インド風精力サプリ」で鉛中毒に(※写真はイメージです)

しかし一歩間違えばもっと深刻なことになっていたかもしれません。

もし心筋梗塞のような深刻な副作用があれば、仮に突然死が避けられたとしても、その後一生、後遺症として心不全を抱えることも考えられます。

鉛中毒による一時的な軽い症状だけで済んだのは不幸中の幸いとも言えます。

個人輸入したクスリや健康食品による健康被害は毎年のように報告されています。

こうした例はあくまで公的機関に情報が届いたから周知されているだけで、「やましいことがあるから」と思い、健康被害があっても泣き寝入りしている人は、もしかするともっと多いのかもしれません。偽造品をつかんだケースももっと多いはずです。

「ネットで買ったやせ薬」で死亡した例も

中でも、「やせ薬」は死亡例を含む多くの被害を出しています。

「ホスピタルダイエット」というタイ製のやせ薬からは、シブトラミン(やせ薬成分)のほか、ビサコジルやジオクチルスルホサクシネート(下剤)、フルオキセチン(抗うつ薬)、甲状腺ホルモンなどが検出されました。

これを服用した結果、甲状腺機能亢進、排尿困難、意識もうろう、手足の震えといった症状が報告されています。

また、「MDクリニックダイエット」というクスリからは、シブトラミン、フルオキセチン、プロプラノロール(ベータ遮断薬)、甲状腺末、クロルフェニラミン(抗ヒスタミン薬)、ビサコジル、ジオクチルスルホサクシネートが検出され、因果関係は明らかではないとされていますが、死亡した事例が報告されています。