第2、第3の「白紙運動」の導火線に

若年層は貯蓄が少ない。失業は貧困や格差拡大につながりやすい。おまけに、中国では、2014年から国家主導で「社会信用システム」の構築が進み、学歴や勤務先、支払い能力や人脈等で個人の信用度がスコア化されるようになった。これも閉塞感や不公平感を助長させる。

「日本に留学した方が中国で成功しやすいと思いましたが、中国での就職は厳しいです。今ではアメリカに行っておけばよかったと思います。アメリカで働けましたから」(前述の中国人女性留学生)

筆者は、こうした不安も、ゆくゆくは習近平にとって火種の1つになり、第2、第3の「白紙運動」を引き起こす導火線になると見ている。

撮影=高麗大学1年 伊藤晃輝氏
ソウルの高麗大学でも習近平批判のビラが貼られた。

「一強体制」の唯一無二のチェック機能

11月8日に行われたアメリカ中間選挙では、若者たちがこぞって民主党候補に投票し、事前に予想された共和党圧勝の下馬評を覆した。

エジソン・リサーチ・ナショナル・エレクション・プールの出口調査によれば、下院議員選挙では、18歳から29歳の63%が民主党候補に投票し、上院でも、ペンシルベニアなどの激戦州で若者の多くが民主党候補に投票し勝利に結び付けている。

11月26日に実施された台湾統一地方選挙では、若者層が蔡英文総統率いる民進党を支持せず、国民党に敗れるという結果をもたらした。2024年1月の総統選挙では、今から若者たちの票がどう動くかに注目が集まっている。

もちろん中国では、総書記を国民が直接選挙で選ぶ制度などないが、若者たちが声を上げれば、今回の抗議行動のように波を起こすことは可能だ。

先に述べたように、この波が、習近平指導部との衝突を生むリスクもあるが、誰も習近平に諫言できない「一強体制」を思えば、若者たちの声と行動だけが、「裸の王様」に対する唯一無二のチェック機能と言えるかもしれない。

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