中国各地で「ゼロコロナ」政策に対する抗議行動が広がっている。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「中国の若者たちを突き動かしたのは、ゼロコロナ政策の閉塞感だけではない。若者の5人に1人が就職できない状況で、貧困や格差拡大といった将来への不安を強く感じている」という――。
習近平の狙いは「抗議行動の鎮静化」
12月6日午前10時、半旗が掲げられた北京の人民大会堂では、11月30日に亡くなった江沢民元国家主席の追悼集会が開かれた。
弔辞を述べた習近平国家主席(総書記、以降、習近平と表記)は、「江氏は卓越した指導者」と持ち上げたうえで、「動乱に反対し、社会主義を守った」と強調した。
11月26日以降、北京や上海だけでなく中国各地に拡大した「ゼロコロナ」政策に対する抗議行動。その詳細は、プレジデントオンラインの記事<ついに中国人が声を上げ始めた…それでも「ゼロコロナ抗議」が習近平政権への大打撃にはならないワケ>で解説しているが、思い起こされるのは、1989年6月に起きた天安門事件だ。
天安門事件は、胡耀邦元総書記の追悼集会がきっかけとなった。追悼集会での習近平の弔辞は、「同じ轍は踏まない」「追悼の名の下に抗議行動を鎮静化させる」という狙いが色濃く反映されたものとなった。
中国にとって脅威となるZ世代の閉塞感
今の中国を見る場合、2つの脅威が存在することを忘れてはならない。
1つは、10月の中国共産党大会で総書記として異例の3選を果たし、絶対的な権力を確かなものにした習近平総書記(以降、習近平と表記)が、数年以内に台湾統一へと動くという脅威である。
そしてもう1つが、今回の抗議行動で明らかになった国民が抱えている習近平指導部への不満、それも、Z世代(おおむね1990年代中盤から2000年代に生まれた世代)を中心にした若者たちが感じている閉塞感だ。これらは、一時的に収束しても、またいつ習近平指導部へと向けられるかわからない。