免許返納の6年後の要介護率は約2.2倍に増える

テレビの免許返納圧力のために免許を返納した場合、その高齢者の6年後の要介護率が実に約2.2倍に増えるという調査研究もある(筑波大学の市川雅雄教授ら)。現在500万人いる要介護高齢者がもし700万人に増えれば公的介護費用が年間4兆円増えると試算されている。税金や介護保険料が年4兆円も増えたら……誰がその責任を取るというのだろうか。

和田秀樹『80歳の壁』(幻冬舎新書)

2022年は私自身が関わる仕事でも高齢者への認知バイアスを痛感する年になった。拙著『80歳の壁』(幻冬舎新書)がトーハン、日販ともに本年度ベストセラーの総合一位に選ばれた。

実は、これまでも高齢者向けの本をかなりの数で出していたのだが、年齢をはっきり書くと売れないといわれ続けてきた。ところがとある事情で、2021年に上梓した『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)というタイトルにしたら、その本が本年度上半期の新書ベストセラーでトーハン、日販ともに1位になった。そして『80歳の壁』はそれ以上に売れた。

出版社の人たちの認知バイアスはここで崩れ、年齢を明記した本が当たり前になっている。

『80歳の壁』を出したときに、私自身も高齢者への認知バイアスに気づかされた。

和田秀樹『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)

『70歳が老化の分かれ道』が郊外型のリアル書店で全国的に売れたので、『80歳の壁』も売れるはずだと信じていたが、この本はネットのアマゾンでも一位になった。ついでにいうとKindleでも売れた。これにより80歳前後の人がECカートで本を買うことが明らかになった。聞く限りでは字が大きくできるkindleで読む人も多いようだ。年を取っているから、インターネットやデバイスを使えないというのも完全なバイアスだったのだ。

このようなバイアスが崩れることで、私にはパニックになるほどの執筆依頼が殺到した。数えてみたら2022年の自著の刊行数は60冊。そのため週刊誌で何度も「80歳の壁」といった特集が組まれ、膨大な数のインタビュー依頼が舞い込んだ。