最後はポジティブに相手の背中を押す

メイン部分の「②しかる・注意」を、「①ほめる・共感」「③励まし・信頼」で挟むことで、全体として受け入れやすくするわけです。有名なサンドウイッチ話法は、上下のパンの形が同じですが、ハンバーガーは上下の形が異なりますね。つまり、①と③に変化をつけることで、注意や忠告をされた相手の気持ちを最終的に前向きに変化させていくわけです。

この忠告も本当に伝えたいのは、「とはいっても、このところ連日、数字に間違いがあるから、今後は間違わないようにしてくれるかな」の部分です。それに耳を傾けてもらうために、部下の立場に共感することからスタートして、最後はポジティブに背中を押すわけです。

失敗談だけは、上司の昔話が歓迎される

「僕の時代はね……」「前の会社ではね……」「今まで私は……」

あなたもこのようなセリフを、部下に口にしたことがあるかもしれませんね。実は、私の口癖でもありました。言っている本人は悪気はないのですが、これらは「部下に嫌われる上司のセリフ」の代表格です。事実、私も部下に嫌われていた時代もありました(笑)。

ただし、仕事のミスや失敗談は、この限りではありません。むしろ「私も過去にこんな失敗をしてね……」と、過去のエピソードを話すことで、部下は心を開いてくるのです。

部下にとって私たちは、親と大差ない年齢です。そんな年上の人とのコミュニケーションに、少なからずとも、彼らは緊張しているのです。「自分とはレベルが違う」「雲の上の人」と思っている部下もいるでしょう。

西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)

そんな年齢も立場も違うあなたが、若い頃の失敗談を話したら、彼らはどのように受け取るでしょうか?

きっと「失敗は誰にでもあるんだ」と感じて、安心感が芽生えることでしょう。さらには雲の上の存在と思っていたあなたにも、自分と同じような経験をしてきたことに、親近感を得て感動するはずです。

失敗談を伝えるときには、やさしい表情を浮かべつつ、少し遠くを見つめましょう。懐かしい過去を回顧するまなざしですね。話す速度は少しゆっくりめに。失敗が糧になることの、生き証人になってあげればいいのです。そうすれば、直接しかったり、注意をしたりする必要もなくなることでしょう。

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