バービカンの劇場・舞踏部門チーフを務めるトニ・ラックリン氏はワッツ・オン・ステージに対し、一般販売後の反響の大きさに「私たちは完全に圧倒されています」と述べている。5月時点でのコメントとして氏はまた、次のように続けた。

「野心的な国際コラボレーションであることから胸躍るような成功を期待していましたし、これまでのところチケット本当に多くのチケットが1日で売れており、とてつもないことです。とても魅力的なこの舞台を私たちのシアターで秋に上演するのが待ちきれませんし、スタジオジブリ旋風の一翼を担うことが楽しみでなりません」

エグゼクティブ・プロデューサーは久石譲氏

原作となった映画版「トトロ」は、田舎に移り住んだ幼い姉妹の暮らしと冒険を描いた物語だ。家族とともにボロ屋に引っ越してきた幼いサツキとメイが、子供にしか見えない不思議な生き物たちに遭遇する。

舞台版は、ロンドンのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーと日本テレビが共同製作している。「トトロ」含め数々のスタジオジブリ作品で音楽を担当している久石譲氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務める。タイトルに躍る「MY NEIGHBOUR TOTORO」の文字は、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが自らしたためた。

Photo by Manuel Harlan © RSC with Nippon TV
「MY NEIGHBOUR TOTORO」(舞台「となりのトトロ」)場面写真

一方で現地チームとして、脚本は『オッペンハイマー』のトム・モートン=スミスが書き下ろした。ロンドンのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー劇団が演じ、インプロバブル劇団が協力している。

「いいよ、君がやるなら」宮崎駿監督がゴーサイン

海外作が日本でも舞台やミュージカルとして上演される機会は多いが、日本原作の作品が海を越えて演じられるケースはまだまだ少ない。製作総指揮の久石氏は、この状況を変える好機だと捉えたようだ。

米演劇情報誌のプレイビルではプレミアが発表された4月当時、久石氏による次のようなコメントを掲載している。

「日本では演劇やミュージカルに多くの人々が熱中していますが、日本発のショーやミュージカルが世界で上演される機会はありません。トトロは日本の作品であり世界的にも有名ですので、今回舞台化されることで世界中の観客に届く可能性を秘めています」
「そう考えて宮崎さん(宮崎駿監督)に『そんな舞台を見てみたいんです』と言ったら、『いいよ、君がやるならね』、と」

アニメ版に携わっていたからこそ作品を傷つけたくないという思いが強かった久石氏だが、作品のテーマが普遍的なものであり、文化の違いを越えて理解してもらえると確信したからこそ、舞台化に踏み切ったのだという。

成人女性が演じるサツキとメイに苦労も

現地での評判は上々だ。ガーディアン紙は星5つ中4つの評価を与え、「本当の温かさを伝える」としている。

“お化け屋敷”に越してきた幼い二人の姉妹が森の精霊たちに出会うという「ささやかながらしっかりとした」映画版のストーリーが、舞台でも「極めて忠実に」再現されているという。ステージ上に尖り屋根の例の家が再現され、姉妹は夏の冒険を繰り広げる。

Photo by Manuel Harlan © RSC with Nippon TV
「MY NEIGHBOUR TOTORO」(舞台「となりのトトロ」)場面写真