2年で100万人を動員した舞台版「呪いの子」の偉業
2023年8月9日、演劇「ハリー・ポッター 呪いの子」が累計100万人を集めた。2022年7月に赤坂ACTシアターという専用劇場が出来上がり、2年間にわたって約900回の公演が行われた結果である。
この「観客動員数100万人」というのはどれほどの数字だろうか。そしてなぜ『ハリー・ポッター』は終了したはずなのになぜワーナーは「呪いの子」を展開しているのだろうか?
映画でいえば「劇場版 名探偵コナン」が27年かけて27作で全累計1億人、ミュージカルでいえば劇団四季「ライオンキング」が27年かけて約1万4000回の公演で累計1370万人の動員数という記録が残っている。
宝塚雪組公演『ベルサイユのばら』も40年近くかけて累計500万人という数字であったし、2.5次元ミュージカルまで広げても『テニスの王子様』が19年かけて累計300万人という記録だ。
いずれも四半世紀という長い期間をかけた実績であり、比べてみれば2年で100万というのは十分に記録的な数字だろう。特に音楽や歌唱時間のない演劇というジャンルにおいて「呪いの子」は傑出した数字であることは確かだ。
完結していたはずの物語が動き始めたワケ
チケット価格が1万円を超す演劇・ミュージカルとなれば1年間で20~50万人動員という数字が日本でもトップクラスの基準となる。
その意味では最初の1年で58万人超え、2年目もそれほどペースを変えずに100万人まで走り切った数字がいかに「桁違いか」というのは理解できる。
場所は、1・2階席で1324席をもつ赤坂ACTシアターの専用劇場1劇場のみ、それが毎回1000人以上で埋まり続けている本作は、日本演劇史においても最速のスピードで成長・成功している演劇といっても過言ではないだろう。
そもそも2007年に原作『ハリー・ポッターと死の秘宝』が完結、その映画版も2011年に完了して以来、「ハリポタ・ロス」が世界中で続出していた。
シリーズ完結して9年、すでに絶筆を表明していたJ.K.ローリングが、舞台原作とはいえ再び筆をとりはじめた理由は「ファンは物語に対して、とても忠実で情熱的。そのことが私を呼び戻したの。ファンなしには、脚本を書こうなんて思わなかった」と伝えている。
原作者本人が舞台版で展開される「本当の最終話」を描いた、ということで2016年に英国から始まった本作はロケットスタートしていた。