働く女性たちの「弱み」は社内政治力

入社10年以内に9割の女性が営業現場を離れてしまうという各社の課題を解決するための「エイジョカレッジ」を運営するチェンジウェーブ代表の佐々木裕子さんは、企業で働く女性たちの「弱み」は社内ネットワークと情報収集力の貧弱さだと指摘する。ネットワークがあれば、当然情報も入ってくるので、この2つは相関関係がある。

私自身もAERA時代に、この2つの力不足を痛感していた。なぜ男性たちは自分のやりたい企画を通し、希望の部署に移れているのか。もちろん男性全員ではないが、よりチャンスに恵まれている男性たちを観察していると、社内にスポンサーと呼ばれる、自分を引き上げてくれる存在がいたり、上司や先輩・同期などと頻繁に飲みに行くなどして、情報交換をしていたりした。

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管理職になったばかりのころ、どう振る舞っていいかわからなかった私は、取材などで知り合った社外の女性役員や管理職の人たちに教えを請いに行った。その時ある製薬会社の女性役員からは「政治力を身につけなさい」と言われた。

会議でいきなり意見を言う前に情報を収集しておくこと。自分のやりたい企画を通すためには、社内のキーパーソンに事前に説明して理解を求めておくこと。いわゆる「根回し」と言われるもので、女性はこうした行動を「狡い」「正式なルートではない」として嫌いがちだ。だが、その女性役員はこう話した。

「正論を言って、正式なルートだけで通そうとしても、なかなか会社では通らない。ゴールがその企画やプロジェクトを実行することなら、そのためにどうすべきか考えるのは戦略です」

女性リーダーがぶつかる「正論の壁」

当時の私は男性社会のルールにおもねるようにも思えて、すんなり理解した訳ではなかった。しかし、何度も正面突破を試みて玉砕するうちに、最初に誰に説明しておくべきか、男性の経営層や管理職を納得させるには自分のやりたいことだけを主張するのでなく、会社側に立って考え、会社がゴーサインを出しやすいようなロジックを組み立てることを学んだ。

女性が管理職や経営層になってぶつかる壁はいくつもあるが、その一つにこの「正攻法の壁」「正論の壁」があると思う。よく女性リーダーを育成する社内研修などでは「経営者視点に立った」会社への提案というプログラムが盛り込まれているが、そこでは一見自分が「正しい」と思っていることも、視点を変えてみれば「部分最適」が「全体最適」とは限らないことも理解できるようになる。

だが最近私は、むしろ自身に「足りない」「弱み」だと思っていたことが、実は「強み」になっているのではないかと考えるようになった。