女性の方が「他者への共感」に自覚的

トーゲル教授はセミナーや講演などで参加者から「自分はどんな人間か」を一言で表現してもらっているが、その言葉を男女別に見ると非常に興味深い。女性からは「人の役に立つ」「手助けを惜しまない」「チームワークを重視する」「優しい」「協調的な」「面倒見が良い」というキーワードが挙がる一方、男性からは「自信がある」「野心的な」「自立している」「失敗を恐れない」「実行力がある」「積極的な」という言葉が多い。

これまで理想のリーダー像に必要だった要素は「自立」「積極的」「実行力」だったかもしれない。だがトーゲル教授は、「変革型」においてもっとも重要なことは「メンバーを尊重することだ」という。そして「男性よりも女性の方が、変革型リーダーシップの資質がある」と分析している。

確かに男女別の自己分析の結果を見ると、女性の方が「他者への共感」を自分の特性だと考えている人が多い。さらに「変革型」を構成するのは4つの要素、①信頼②モチベーション③刺激④コーチングだが、様々な研究からこれら全てにおいて、女性の方が得意であることもわかっている。

日本の企業で女性の管理職や役員が増えない一因は、時代が求めるリーダー像が変わってきていることに気づいていない経営層が多いこともある。もしくは気づいていたとしても、そのことを認めてしまうと、これまで男性たち自身が築いてきた「理想のリーダー像」が崩れてしまうことを恐れているのかもしれない。

管理職でないと味わえない喜び

私はAERA編集部時代に副編集長を9年も務めた。その間に出産して10カ月の育休も取得し、仕事と子育ての両立にも四苦八苦したが、それでもこの副編集長というポジションと仕事内容が気に入っていた。ある程度、自身の裁量で仕事が回せ、何人もの編集部員と組んでスピード感を持って企画をアウトプットしていける醍醐味は、一人の記者として仕事をしている時以上の達成感ややりがいがあった。

編集部員一人ひとりの特性を考えて、担当してもらう企画を考え、その企画で編集部員が成果をあげて「ひと皮剥けた」時の喜びは管理職でないと味わえないものだった。後輩女性たちが管理職を躊躇する時に、この「管理職でしか味わえないやりがいと楽しさ」を伝えるようにもしてきた。