「自分に自信がない」はむしろ強みになる
さらに女性の中の「内なる壁」としてよく挙げられるのが、「自信過小」という問題だ。
男女の昇進意欲の差を生み出す要因の一つとしても、この「自己評価の差」が挙げられる。2019年の全米経済研究所の調査によると、女性は男性より自分のパフォーマンスを15%ほど低く評価する傾向にあり、この自己評価の低さがリーダーを躊躇する背景にあると考えられている。
これらは「インポスター症候群」と言われ、特に女性たちは周囲からは高く評価されていても、「自分は評価に値しない」「自分にはそういう能力はない」と自身を過少に評価する傾向が強いと言われている。
この女性たちの「自信過小問題」はこれまでネガティブに捉えられてきた。そもそも自信過小の背景にも、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)からくる経験や機会のロスの積み重ねなど構造的な問題もあるのだが、しかし、この「自信のなさ」「自己肯定感の低さ」が今の時代のリーダーには「強み」になるという指摘もある。
育児休業期間をマネジメント能力開発の機会にする「育休プチMBA」を主宰する小早川優子さんは、著書『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』で、むしろ今、自信のなさは「内省できる、周囲に心配りができる」という面でプラスに働く「強み」になると指摘している。
自分自身がリーダーとしてどうだったのか客観的に見るのは難しいが、私自身はAERA時代もビジネスインサイダージャパン時代も、編集長として何人かの女性たちを副編集長に登用してきた。その経験から実感しているのが、「女性もリーダーは十分できる、むしろ向いている人が多い」ということだ。
必要なのはリーダー像のアップデート
女性には(全員ではないが)、比較的「他者を尊重し」「丁寧にコミュニケーションをとる」人が多く、それらが今のリーダーとして求められる資質だということはこれまでも述べてきた。今、1on1と言われる部下との対話を仕組み化して重要視する企業も増える中、女性リーダーの中には仕組み化の前から、丁寧な対話を心がけてきた人が多いと感じる。
それは「一方的に指示する」自信がないからこそ、何度も話し、相手の言い分も聞き、納得してもらった上で仕事をしてもらうことが日常になっていたとも言える。
今の若い世代は「なんのためにこの仕事をするのか」納得して働きたいと思っている。
そうした若い世代にやりがいを持って働いてもらうためにも、むしろ求められるのは企業サイド、経営層や上司たちが思い込んでいるリーダー像のアップデートなのではないだろうか。それが変わらなければ、次の管理職の候補者に女性たちを推薦しようとは思わないだろう。