別人格に豹変

12月中旬。河津さん夫婦は居酒屋で忘年会を開催。妻はビールが飲めないので、サワー系や焼酎を2杯飲み、「もう少し飲みたい」と言ったので、河津さんは自分の酎ハイを差し出す。帰り道、妻が「飲み足りない」と言うので、コンビニで缶チューハイを1本ずつ買い、「家で飲んでお開きにしよう」と約束。帰宅すると、「ゆっくり飲む」と言ったのに、妻はあっという間に飲み、「もっと飲みたい」と言う。河津さんが「1本の約束だよ」と返答すると、妻は突然キレた。

「自由がない!」「離婚したい!」「死にたい!」などと言い出したが、帰宅後すぐに薬を飲ませていたため、10分ほどして眠ってしまった。

そんな12月下旬の深夜0時過ぎ、歯磨きのためリビングを離れた数分の間に、妻が別人格に代わっていた。妻の弟の悪口を中心に罵詈雑言を喚き立て、同じことを繰り返し、一向に寝ようとしない。

「妻のきょうだい仲は、8歳離れた弟とはあまり良くなかったかもしれません。妻の両親にとって弟は、高齢になってからやっと授かった男児なので、妻は『弟ばかり優遇されていた』と感じ、妻は弟に対して無理をして下手に出るような言動をとっていたことで、心の中に屈折した感情があったようです。家父長的なやり方を重んじる空気の中、長子として、また姉としての役割を果たさなければならないという、プレッシャーだったんだと思います」

翌日も同じだった。歯磨きから戻ると妻は豹変ひょうへんしていて、昨日と同様、弟の悪口に加え、「私はお金がない!」「早く死にたい!」「頭がおかしい!」など、ずっと同じことを喋り続け、1時間ほどするとやっと寝つく。その間、河津さんは何をどうしたらいいかわからないまま、まさに“触らぬ神に祟りなし状態”。嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった。

その月の25日は、大学病院の受診日だった。ここ最近の様子を主治医に話すと、来月から脳神経内科に加え、精神科も受診することになる。

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その数日後、かつての仕事関係の忘年会に呼ばれたため出かけると、妻は、「楽しんできて!」と明るく送り出してくれた。しかし、現地に着く直前に支離滅裂な電話が入り、やはり弟の悪口が始まる。忘年会中も留守電には意味不明なメッセージが数件入っていた。中には、「私、離婚することにしたから。今後迷惑をかけるようになると思うので、身を引くことにしたから」というメッセージもあった。