コストプッシュ圧力に耐えられなくなっている
また、わが国では日銀が異次元の金融緩和を継続している。米国や欧州などではインフレ鎮静化のために追加利上げや量的引き締め(QT)などの金融引き締めが強化されている。日銀と、FRBや欧州中央銀行(ECB)などの金融政策の方向性の違いは一段と明確になり、内外金利差の拡大圧力は高まっている。
10月21日の海外時間には、1ドル=150円まで円が下落するなど、円安の流れは鮮明だ。エネルギー資源などの価格上昇と円安の掛け算によって輸入物価は上昇し、企業物価が押し上げられている。
一方、わが国では賃金が伸び悩み、需要が停滞している。そのため、8月の消費者物価指数は前年同月比3.0%の上昇だ。企業物価と消費者物価の差を国内の企業は負担してきた。しかし、それが限界になる企業が増え、倒産件数が増加し始めたとも解釈できる。不動産バブル崩壊などによって中国経済が高成長期の終焉を迎えたことも大きい。国内で事業を行う企業を取り巻く環境の厳しさは増している。
倒産件数は今後も増える恐れが高い
やや長めの目線で考えると、わが国で事業を行う企業の倒産件数は、さらに増加する恐れが高い。というのも、ここにきて世界経済を下支えしてきた米国の個人消費に息切れ感が出始めているからだ。
それを示唆するデータは複数ある。まず、中国やASEANなどの新興国から米国に向かう荷動きが鈍化している。1年ほど前の米国では、小売企業が中国などからアパレル、日用品などの輸入を増やした。米国西海岸の港湾は逼迫し、コンテナ運賃も高騰した。それは11月下旬の“ブラックフライデー”、その後の年末商戦での需要をより多く取り込むためだった。
しかし、足許ではそれとは逆に、アジアから米国向けの輸出が減少している。夏場以降、米国の輸入は減少気味だ。日経新聞の報道によると、9月のアジアから米国に向かうコンテナ輸送量は前年同月比で13%減だ。言い換えれば、米国では個人消費が徐々に鈍化し、企業は在庫の積みあがりに直面している。