サービス業を中心に「ゼロゼロ融資」で延命を図ってきた
新型コロナウイルスの感染症が世界全体で深刻化した2020年以降、わが国の企業倒産件数は減少した。2020年度上半期の企業倒産は3858件だった。2021年度上半期の企業倒産は2937件に減少した。
わが国では、経済のデジタル化の遅れ、ワクチン接種の遅れなどによって動線の寸断が長引いた。また、中国などでの感染再拡大の長期化によって、海外からの観光客などインバウンド需要も一時は大きく減少した。飲食、宿泊、交通などサービス業を中心に企業の事業環境は厳しさを増した。
その状況下、政府はいわゆる“ゼロゼロ融資”を実施し、売り上げが減少した事業者を支えた。具体的に政府系金融機関などが、実質無利子、無担保で融資を行った。最初の3年間は実質的に無利子、5年間は元金の返済開始が猶予されるなど、収益力が低下した企業にとってゼロゼロ融資は事業の継続にかなり重要な役割を果たした。多くの企業が元金の返済猶予期間を3年以内に設定した。
経営体力のある企業、ない企業で二極化している
その状況が変わり始めている。わが国の企業倒産件数が増加に転じ始めた背景には大きく2つの原因がある。まず、9月末にゼロゼロ融資は終了した。今後は、融資の返済が本格的に進む。その結果、経営体力を強化できている企業と、それが難しかった(公的な資金支援に依存しすぎた)企業の実力の差が明確になり始めた。
経済がウィズコロナに向かうことを念頭に置いて、新しいビジネスに取り組む、あるいはデジタル技術の導入などを加速させて事業運営の効率性を高めることができた企業は、計画通りに返済を進めることができるだろう。反対に、ゼロゼロ融資によって目先の事業継続を優先した企業は、返済の原資を確保することが難しくなった。そうした企業が増え、倒産件数が増加している。
もう一つは、コストプッシュ圧力の急速な高まりだ。日銀によると、9月の国内企業物価指数(速報)は前年同月比で9.7%上昇した。ウクライナ危機以降、世界全体で天然ガスなどのエネルギー資源や穀物などの価格上昇が勢いづき、インフレが進んでいる。