長男は年収が4.4%高くなる
年収に関しては、長男は年収が約4.4%高くなることが明らかにされています。学歴と同じく、都市部と農村部で違いは見られませんでした。
年収面においても「長男プレミアム」が存在していると言えるでしょう。
さて、これまで見てきたとおり、日本では長男として生まれることが学歴や年収面でプラスに働きます。それでは海外ではどうなのでしょうか。
海外に関する研究を見ると、「長男であるかどうか」という点よりも「何番目に生まれたのか」という点に興味・関心が集まっています。
分析結果をまとめると、アメリカ、イギリス、ノルウェー、スウェーデンといった先進国において、子どもの出生順位が遅くなるほど、学歴が低下する傾向が明らかにされています(*2)。これは、出生順位が早いほど親と共に過ごす時間が多く、教育投資がある程度確保できるためだと考えられています。
さらに、ヨーロッパ14カ国のデータを用いた研究によれば、出生順位の影響は世代を通じて子どもの学歴にも影響することが明らかにされています(*3)。生まれが第1子目である場合、本人の学歴が高くなるだけでなく、その子どもの学歴も高くなる傾向があったのです。なお、この影響は男性よりも女性で強く、第1子目の母親から生まれた女の子ほど、第2子目以降の母親から生まれた女の子よりも学歴が高くなっていました。
「何番目に生まれたのか」という自分でコントロールできない要因が子の世代にまで影響するという結果は、非常に興味深いものです。
(*2)アメリカ: Kantarevic, J., & Mechoulan, S. (2006). Birth Order, Educational Attainment, and Earnings: An Investigation Using the PSID. The Journal of Human Resources, 41(4), 755–777.
イギリス:Booth, A.L., & Kee, H.J. (2009). Birth order matters: the effect of family size and birth order on educational attainment. Journal of Population Economics, 22, 367–397.
ノルウェー:Black, S. E., Devereux, P, J., & Salvanes, K, G. (2005). The More the Merrier? The Effect of Family Size and Birth Order on Children's Education, The Quarterly Journal of Economics, 120 (2), 669–700.
スウェーデン:Barclay, K, L., (2015). Birth order and educational attainment: evidence from fully adopted sibling groups, Intelligence, 48, 109-122.
(*3) Havari, E., & Savegnago, M. (2020). The intergenerational effects of birth order on education. Journal of Population Economics, 35, 349–377.
「ガチャ」による不公平を解消するために
これまでの分析結果が示すように、生まれる順番という本人にはどうしようもない要因で学歴や所得に差が生じてきます。この背景には、家庭内の限られた教育資源を配分する際、どうしても最初に生まれた子どもに多く配分してしまう親心も影響しているでしょう。
この問題を解決するのは家庭内だけでは難しい側面があるため、政策的な介入が手段として考えられます。
具体的には教育費用の無償化等による家庭の教育負担の軽減です。
これが実現されれば、例えば「上の子どもは私立に行ったから、下の子どもは公立に行ってもらわないと困る」といった選択肢を狭める事例も少なくなるでしょう。